協議離婚とは話し合いによる離婚のことで、離婚をしたいときにはまずこの協議離婚を目指すことになります。しかしお互いに感情的になってしまい、上手く話し合いが進まないケースも多いです。協議離婚をスムーズに進めるためのポイントを、協議離婚の進め方とあわせてご紹介します。
離婚を切り出す前の事前準備
離婚の話し合いは、お互いに譲らず感情的に対立して、話し合いが進まなくなることが多いです。離婚を考えている夫婦ですから、多少揉めるのは当然です。「こいつの話なんて聞くもんか!」と反発したり、離婚したくないとゴネたり、財産分与などの離婚条件でケンカになったり…。協議離婚はいろいろなトラブルが起こりがちで、なかなか思うように進まないものなのです。
そんな離婚協議をできるだけスムーズに進めるためには、事前準備がなによりも重要です。
- 財産の把握
- 慰謝料獲得のための証拠集め
- 子どもの連れ去り防止
- 離婚後の生活基盤の準備
財産の把握
離婚時には財産分与といって夫婦の財産を分けることになりますが、財産を分けたくないあまりに相手が財産を隠すおそれがあります。これを防ぐには隠される前に財産を把握する必要があり、離婚を切り出す前に準備しておかなくてはいけません。
慰謝料獲得のための証拠集め
また、不倫など相手の有責で離婚する場合には慰謝料を請求できますが、証拠が必要です。離婚を切り出した後では証拠を隠されるおそれがあるので、こちらも事前に準備しなくてはいけません。
子どもの連れ去り防止
子どもがいる場合、本来は子どもの養育権なども話し合って決めますが、その前に子どもを連れ去ってしまう人もいます。一度連れ去られると、裁判をしないと子どもを取り返すことが難しく、それでも取り戻せないケースさえあります。子どもを連れ去られないよう、事前の準備が必要です。
離婚後の生活基盤の準備
さらに、離婚後の生活基盤も事前に考えておきましょう。仕事や住む家などを事前に確保しておけば、話し合いの場で足元を見られる心配がありません。
以上のような事柄についてしっかりと事前準備をしておけば、冷静に離婚協議にのぞむことができます。
協議離婚の流れとポイント
実際、協議離婚はどのように進めていくものなのでしょうか。大体の人は初めての経験ですし、マニュアルなどもありませんから、不安ですよね。
でも、大丈夫です。全体の流れとそれぞれのポイントをおさえておけば、初めてでも上手く進めていくことができます。
離婚を切り出す
まずは相手に離婚を切り出しましょう。
一度「離婚」という言葉を使ったら、どちらも冷静ではいられません。あらかじめ話し合う内容をまとめておくと、動揺せずに自分の気持ちを伝えることができます。
ここで大切なのは、絶対に感情的にならないようにするということです。「離婚して!!も嫌なの!」では、単なるケンカになってしまいます。話し合いをしなくてはいけなのですから、冷静で丁寧な言い方を心がけましょう。
相手がいわゆるキレやすいタイプの場合などには、場所にも気をつける必要があります。離婚を切り出されたショックのあまり、暴力をふるう人もいます。ファミレスなど、人の目がある場所で話し合うのもひとつの方法です。
冷静に対処する自信がない人は、協議離婚申入書などの書類を作成するのもおすすめです。あらかじめ作った文書を見せながら話せば、相手にもわかりやすいです。
離婚することで合意する
次は、夫婦双方が離婚に同意しましょう。
細かな離婚条件は次のステップで話し合うとして、ひとまずはお互いのゴールを「離婚」という同じ場所にしておく必要があります。
相手がどうしても離婚に同意しない場合には、調停・裁判離婚を視野に入れて動くことになります。
決めることをリストアップして話し合う
夫婦とも離婚に同意したら、次は離婚条件を決めていきましょう。離婚時に決めなくてはいけない事項はたくさんあるので、リストアップして順番に話し合うとスムーズです。
主に決めるべきことの例としては、次のようなものがあります。
- 財産分与(自宅、住宅ローンも含む)
- 養育費
- 慰謝料
- 親権
- 面会交流
まず、財産分与は折半が基本です。結婚期間に夫婦で築いた財産は離婚時に半分こするのが公平です。慰謝料にも大体の相場があり、たとえば不倫で離婚に至った場合には200~300万円が一般的な相場です。
ただし財産分与・慰謝料は、当事者間で合意さえできれば、どのような金額でも構いません。協議離婚は話し合いですから、双方が同意さえすれば内容は自由に決めることができます。
養育費は、親には子を扶養する義務があることから必ず発生します。「もう関わりたくないから養育費は断った」という方がまれにいますが、養育費は子どもの権利です。必ず離婚条件に入れましょう。
離婚協議書を作成する
離婚条件が決まったら、それを紙に書いて離婚協議書を作成します。
「会社や役所じゃないんだし、口約束でもいいじゃん」と思うかもしれませんが、口約束の場合、「言った、言わない」の争いが必ず発生します。約束を守らせるためには 「離婚協議書」という書面を作成する必要があるのです。
離婚は大きな金銭がからむ約束ですから、簡単な内容であっても必ず離婚協議書を作成しましょう。
公正証書を作成する
離婚協議書には一定の法的拘束力がありますが、離婚協議書を公正証書にしておけば、もっと強い法的拘束力をもたせることができます。公正証書があれば、確定判決等を経ずに、強制的に回収する手続きに入ることができるのです。
公正証書を作成する時に、「連帯保証人」をつけておくとより効果的です。連帯保証人とは債務を連帯して負う人のことであり、債務者と同じ金銭の支払い義務を負います。連帯保証人をつけておけば、相手が約束を守らず金銭の支払いを拒んだ場合に、代わりに保証人に支払いを請求することができるのです。
離婚する時には、財産分与や養育費などで多額の金銭支払いの約束がなされます。こうした大きなお金を約束する場合には、連帯保証人をつけて不払いのリスクを軽くしておくのがおすすめです。
離婚届を提出する
最後に離婚届を提出しましょう。離婚届は市区町村役所でもらえますし、インターネットでダウンロードも可能です。
離婚届けの提出先は、届出人の本籍地か所在地の市区町村役場の戸籍課です。郵送もできます。本籍地以外の市区町村役場に提出する場合は、戸籍謄本の提出も必要です。
離婚届を提出すると、後日役所から離婚届を受理した、という内容の封書が届きます。これで晴れて離婚成立です。
協議離婚のメリット・デメリット
メリット
協議離婚は調停・裁判での離婚と比較すると、費用・期間がかからないというメリットがあります。夫婦の話し合いですから基本的に無料ですし、難しい提出書類や面倒な手続きもありません。
デメリット
しかし協議離婚には、相手の不当な言い分を飲まされがちというデメリットもあります。口が上手く気が強い方に得な条件での離婚になってしまうおそれがあるのです。例えば、配偶者に暴力(DV)がある場合や妻が夫の暴力をおそれて離婚や離婚後の財産分与についての意見を述べることができないなどの場合もあります、そもそも仲良く冷静に話し合って解決できるなら離婚に至っていないわけで、夫婦の性格によっては、泥沼化する危険もあります。
費用と手間を惜しんで話し合いを続けるのではなく、ある程度のところで見切りをつけて、調停や裁判といった公的な手続きを検討しましょう。
協議離婚が進まない場合|弁護士に相談・調停を申し立て
協議離婚は当事者である夫婦での話し合いのため、どうやっても進まないこともあります。協議が進まない場合、弁護士に相談してみましょう。お金はかかりますが、慰謝料の相場や一般的な財産分与の方法などのアドバイスをもらえますし、あらゆる交渉や手続を弁護士が代わって行なってくれます。
それでも上手く行かなかった場合は、離婚調停を申し立てることになります。調停とは家庭裁判所の手続きのひとつで、中立な立場の第三者である調停委員に話を聞いてもらい、話し合いを成立させます。
まとめ
協議離婚ではお互い感情的になってしまい、話し合いが上手くいかないことがあります。スムーズに協議離婚を進めるには、事前準備をしっかりとし、協議離婚の流れとポイントを理解しておくことが大切です。
協議離婚は費用や時間のかからない離婚方法ですが、不当な条件を飲まされる可能性があるなどデメリットもあります。上手くいかない場合には弁護士への相談や調停の申し立てなど、ほかの方法も検討しましょう。