養育費未払の場合に差押できる?祖父母や兄弟姉妹に支払い義務はあるか?

法律相談

元配偶者から養育費の支払いが途絶えた。

リストラされたみたいだし、差押えをしてもとりはぐれるのではないか。

このようなことでお悩みの子育て中の方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、養育費未払の場合の差押の有効性や、祖父母あるいは兄弟姉妹から養育費を確保できるかという点について解説していきます。

養育費の未払いと差し押さえ

養育費は、親の子に対する扶養義務に基づいて発生するものです。

原則として子が20歳になるまで支払うものであり、子が大学進学している場合には大学卒業まで支払うこととするのが最近の傾向です。

そのため、離婚した場合、元配偶者は長期間に渡って、養育費を支払う義務を負うこととなります。

養育費を支払っている期間、元配偶者の経済状況が変わることもままあります。

例えば、リストラされた、転職で給与が下がった、事業が失敗して倒産してしまったということです。

このような事態が発生すると、養育費の支払いが滞ることも少なくありません。

そうすると養育費の支払いを受ける側としては、これを確保するために給与や預金を差し押さえたいと考えることになるでしょう。

差押えが可能なケースは、養育費の支払いについて当事者間で公正証書を交わしていた場合や、調停が成立して調停調書が作成されている場合、あるいは審判が下されて審判書がある場合です。

これらを債務名義として強制執行の手続を行い、給与や預金を差し押さえることとなります。

ただし、養育費の支払いが滞る上記のケースでは、そもそも差押えの対象となる給与や預金がないということも少なくありません。そうすると、費用をかけて差押えを行っても、空振りに終わってしまいます。

そこでこのような場合に、元配偶者の両親である祖父母に肩代わりして払ってもらうことはできないかということが問題となります。

祖父母に養育費の支払いをしてもらうことはできるか?

では、祖父母に養育費の支払いをしてもらうことはできるでしょうか。ケースごとに解説をしていきます。

祖父母の養育費支払い義務①保証人になっている場合

まず、祖父母が元配偶者の養育費の支払について保証人になっている場合には、問題なく養育費の請求をすることができます。

なお、祖父母が単なる保証人の場合は、元配偶者が支払いできなくなった場合にはじめて請求が可能となりますが、連帯保証人の場合には、そのような事情がなくても祖父母に請求が可能です。

祖父母の養育費支払い義務②扶養義務に基づく場合

祖父母が連帯保証人になっていない場合でも、祖父母自身の孫に対する「生活扶助義務」に基づいて養育費を請求することも可能です。

民法877条1項では、直系血族に対して互いに扶養する義務があることを定めています。

祖父母と孫は直系血族の関係にあるため、祖父母は孫に対して扶養義務を負うこととなるのです。

しかし、だからといって元配偶者に対する請求をしないで祖父母に即養育費の請求をすることはできません。

子どもに対して第一義的に扶養義務を負っているのは両親です。祖父母が生活扶助義務に基づいて養育費を支払う義務が生じるのは、両親だけでは子供を扶養できない場合に限られます。

そのため、離婚後、元配偶者が養育費を支払うことができない場合に限って、祖父母に養育費を請求することができます。

また、祖父母の孫に対する生活扶助義務は、親の子に対する扶養義務(「生活保持義務」といわれます。)よりも軽いものです。そのため、養育費として支払うべき金額は親の養育費よりも低く、また、あくまで祖父母の生活に余裕があるときのみ支払えばよいとされています。

任意に支払ってもらうことは可能

祖父母が保証人になっていない場合や、祖父母が生活扶助義務を負わない場合には、祖父母は養育費を支払う法律上の義務を負いません。

しかし、祖父母がこれらの義務がなくても任意で養育費を支払う意思を表明した場合には、支払ってもらうことが可能です。

兄弟姉妹に養育費を請求することは可能か。

ケースとしてはまれだと思われますが、兄弟姉妹が養育費の支払いについて保証人になっていた場合には請求することが可能です。

また、民法877条1項では、祖父母と同様、兄弟姉妹にも扶養義務を負わせています。

その扶養義務は、祖父母の場合と同様「生活扶助義務」であり、子の両親が負う扶養義務よりも軽いものです。

そのため、兄弟姉妹が養育費の支払いをしなければならないのは、両親が養育費を支払うことができず、自身の生活に余裕がある場合に限られます。そして、支払うべき金額は両親が支払うべき養育費よりも低額になります。

保証人になっておらず、扶養義務を負わない場合でも、任意で養育費を支払うことができるのも、祖父母の場合と同様です。

まとめ

子どもからしても、また離婚後子供を養育する親の立場からしても、子どもの養育にあたってかかるお金を十分に確保するためには、義務ある人に支払ってもらうことを考えることとなります。

実務上は、元配偶者による養育費の支払いは途中で途絶えることが多く、その後誰からも支払いを確保せずに時が過ぎてしまいがちです。

子どもをしっかりと育てるためには、泣き寝入りせずに、元配偶者、それが無理なら祖父母などに請求できるものは請求しましょう。

祖父母や兄弟に養育費を支払ってもらえるかどうかは、調停などの手続をしないとわからないことも少なくありません。

祖父母や兄弟に対する扶養料請求の調停は、実例が多いわけではありませんので、検討される場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。

養育費の問題に精通した弁護士であれば、泣き寝入りせずに済む方法を検討することが可能です。どうぞあきらめずにご相談ください。

この記事を執筆した人
寺林 智栄 弁護士

NTS総合弁護士法人札幌事務所。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://www.attorneyterabayashi.com/

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