養育費の取決めをしないで離婚したものの、後になって「やはりもらっておけばよかった」と思う方もいらっしゃることでしょう。
では、離婚後に改めて養育費の請求をすることは可能でしょうか。
今回はこの点について解説していきます。
養育費を後から請求することは可能か?
ここではまず、養育費を離婚時に取り決めていた方場合にあとから請求することは可能かについて解説します。
養育費の取決めなしで離婚する背景
そもそも離婚時に養育費を取り決めないのはなぜでしょうか。
実は、養育費の取決めなしで離婚することは実務上少なくありません。
比較的多い事例としては、相手方と離婚後一切の縁を切りたい場合に、子との面会交流をさせず養育費の請求もしないというケースです。
また、配偶者からのDVがあるケースにおいては、一刻も早く離婚をするために、一切の経済的な要求をしないことも多く、その一環で養育費を請求しないことがあります。
養育費を後から請求することは可能か
離婚時に請求しなかった養育費を後から請求することは可能です。
養育費は、親の子に対する扶養義務に基づいて生じているものであり、離婚した後も子との間には血縁上の親子関係が残り、これに基づいて扶養義務も残ります。
そのため、子に対する扶養義務に基づいて、離婚後も子が原則的に20歳になるまでは、養育費を請求することが可能です。
養育費を過去に遡って請求することは可能か
養育費請求の意思を明確に表明していたにもかかわらず、支払がなかったというケースであれば、意思を明確に表明した時点まで遡って請求することが可能です。
しかしそうではない場合には、一般的に養育費を過去に遡って請求することはできないと考えられています。
そのため、離婚時に養育費の取決めをしておらず、後から請求するようなケースでは、過去に遡って請求することは難しいと言わざるを得ません。
養育費を後から請求する場合はどうするか
以下では、養育費を離婚した後に請求する方法について解説します。
養育費を請求する方法
離婚後に養育費を請求する方法としては、以下のものをあげることができます。
当事者間で合意して請求する
ひとつめの方法は、元配偶者に対して養育費を支払ってほしいと持ち掛け、これに応じてくれた場合には、金額や月々の支払い日などを話し合いで取り決めるという方法です。
この方法が功を奏するのは、離婚時や離婚後の元夫婦の間の関係が比較的良好な場合に限られます。
険悪な状態で離婚したケースや相手方からのDVから逃れて離婚したようなケースでは、そもそも、事後的に自ら声掛けすることは難しいうえ、仮に声がけしてもトラブルになる可能性が高いため、この方法を採ることはできないでしょう。
養育費請求調停を申し立てて請求する
ふたつめの方法として、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てるという方法があります。
この方法による場合には、男女各1名ずつの調停委員が中心となって調子が進行します。多くの場合は「養育費算定表」というものに基づいて、養育費が算出され、双方の了承がある場合には調停が成立します。
当事者が合意に至らない場合には、手続は審判に移行し、裁判官が収入資料等に基づいて判断を下して取決めをすることになります。
調停の手続は、当事者間の関係が険悪な場合やDVなどの問題があったケースで用いられやすいものです。
当事者間で合意した場合は公正証書が有効
せっかく決まった養育費を相手方が払ってこない場合に養育費を確保することも考えておく必要があります。
調停や審判で養育費が決まった場合には、調停調書や審判書が債務名義というものになり、これに基づいて相手方の給与や預貯金を差し押さえることが可能です。
しかし、当事者間の話し合いで養育費を取り決めた場合には、書面を交わさなかったり、交わしても当事者の署名捺印があるだけでは、差押えによる確保をすることはできません。
そこで、当事者間の話し合いで養育費の合意をした場合には、その合意内容を執行認諾文言付きの公正証書にしておくことが必要です。
執行認諾文言とは、養育費の支払い義務を負う当事者が支払を滞った場合には、直ちに強制執行を受けてもやむを得ないという内容の文言です。
これを公正証書に記載しておけば、調停や審判と同じように、不払いがあった場合に相手方の給与や預貯金を差し押さえることができます。
公正証書は公証役場で作成するもので、費用が調停よりも高額になり、印鑑証明も必要なため面倒な側面もありますが、効果は高いといえます。
養育費問題を弁護士に相談するメリット
離婚後に養育費を請求したい、養育費を支払ってくれない相手方から取り立てたいなど、養育費の問題でお悩みの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に相談すれば、例えば、離婚後の養育費請求については、調停を申し立てたほうが良いか申立てずに交渉でまとめることができるかなどの見当をつけてもらうことができます。また、養育状況などを聴取して、妥当な養育費の金額を見積もってもらうことも可能です。
養育費を相手方が支払ってくれない場合には、どのような方法で取り立てるのが有効か検討してもらうことが可能です。
養育費問題を弁護士に相談することはメリットが高いといえます。
まとめ
養育費を後から請求することが可能であること、相手方との関係が険悪であっても調停を申し立てるという方法があることなどがお分かりいただけたと思います。
離婚時に養育費の取決めをしなかったばかりに、子どもの年齢が上がるにつれて学費等の負担が重くのしかかり、経済的に苦しい思いをする方も少なくありません。
養育費を後になってから請求することには何の問題もありませんので、躊躇せずに請求しましょう。
ご不安なことがある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。