養育費の金額相場は、元夫婦の収入バランス(年収)や子どもの年齢・人数によって決まります。
今回は裁判所が公表している算定基準に従い、養育費の金額相場の計算方法や計算例などを解説します。
養育費の相場・決め方
養育費は夫婦が合意すればどのように決めても構いませんが、裁判所が公表している算定基準が一定の参考になります。
また、毎月の養育費に含まれない「特別費用」についても請求できます。夫婦が離婚する際には、特別費用の範囲や支払い方法などについても取り決めておきましょう。
養育費は合意で決めるのが原則|どのように決めてもよい
養育費の金額や支払い方法は、離婚する夫婦の合意によって決めるのが原則です。
夫婦が合意すれば、養育費をどのような金額としても構いません。標準的な額を超える養育費を定めることも認められます。
合意できなければ訴訟(または審判)で決める
養育費について合意できなければ、離婚訴訟(離婚後の場合は家事審判)によって養育費の金額が決定されます。
訴訟や審判の際には、後述する算定基準を適用して養育費が計算されるのが一般的です。
最終的には訴訟や審判になることを見据えると、離婚協議の段階から、算定基準をベースとして養育費の金額を話し合うのが妥当と考えられます。
裁判所が公表している養育費の算定基準
裁判所は、養育費の計算に関して以下の算定基準を公表しています。
- ①計算式を用いる方法
- ②養育費算定表を用いる方法
参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所
計算式を用いる方法
1円単位で適正な養育費の金額を計算するには、以下の計算式を用います。
養育費=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
上記の計算式によって養育費を計算する際の手順は、以下のとおりです。
- 義務者と権利者の基礎収入を求める
- 子の生活費を求める
- 養育費の金額を求める
義務者と権利者の基礎収入を求める
「基礎収入」とは、総収入から子の養育費に充てるべきでない金額を控除したものです。子の養育費に充てるべきでない金額には、公租公課・就労のための費用・住居関係費などが含まれています。
基礎収入の計算式は、以下のとおりです。
上記の計算に用いる基礎収入割合は、給与所得者か自営業者かによって異なります。
<給与所得者>
総収入額
(=源泉徴収票の支払金額) |
基礎収入割合 |
0~75万円 | 54% |
~100万円 | 50% |
~125万円 | 46% |
~175万円 | 44% |
~275万円 | 43% |
~525万円 | 42% |
~725万円 | 41% |
~1,325万円 | 40% |
~1,475万円 | 39% |
~2,000万円 | 38% |
<自営業者>
総収入額
(=確定申告時の課税所得金額) |
基礎収入割合 |
0~66万円 | 61% |
~82万円 | 60% |
~98万円 | 59% |
~256万円 | 58% |
~349万円 | 57% |
~392万円 | 56% |
~496万円 | 55% |
~563万円 | 54% |
~784万円 | 53% |
~942万円 | 52% |
~1,046万円 | 51% |
~1,179万円 | 50% |
~1,482万円 | 49% |
~1,567万円 | 48% |
子の生活費を求める
子の生活費は、以下の式によって計算します。
子の生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数合計÷(100+子の生活費指数合計)
14歳以下:62
15歳以上:85
養育費の金額を求める
最後に以下の式(再掲)を適用して、養育費の金額を計算します。
養育費=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
養育費の計算|算定表を用いる方法
上記の計算は複雑な手順を要するため、簡易的に養育費の金額を計算できる「養育費算定表」も公表されています。
養育費算定表では、子どもが3人以下の場合について、子どもの人数や年齢に応じて19種類の表が用意されています。
該当する表において、権利者(受け取る側)と義務者(支払う側)の年収が交差する点を参照すると、大まかな養育費の金額を求めることができます。
ただし、子どもが4人以上の場合や、夫婦いずれかの年収がきわめて高い場合には、養育費算定表を用いることができません。これらの場合や、1円単位で適正な養育費を計算したい場合には、前述の計算式を用いて計算しましょう。
毎月の養育費に含まれない「特別費用」も請求可能
上記の各方法で計算した養育費には、以下のような費用が含まれていません。
- 私立学校への通学費用
- 大学への通学費用
- 部活動の費用
- 習い事の費用
- 進学塾の費用
- 海外留学の費用
- 突発的な病気やケガの治療に要する費用
など
これらの費用についても、養育費の一種である「特別費用」として請求可能です。
夫婦が離婚する際には、特別費用の範囲や支払い方法などについても合意しておくことが望ましいでしょう。
養育費の金額相場の計算例
養育費の計算式を用いて、養育費の金額相場を計算してみましょう。なお、以下の各点を前提とします。
- 年収はいずれも給与所得
- 子どもはいずれも14歳以下
- すべての子どもの親権者は母親(妻)
夫の年収600万円・妻の年収200万円・子ども2人の場合
①義務者と権利者の基礎収入を求める
義務者の基礎収入=600万円×41%=246万円
権利者の基礎収入=200万円×44%=88万円
②子の生活費を求める
子の生活費=246万円×124÷224=136万1,786円
③養育費の金額を求める
養育費=136万1,786円×246万円÷(246万円+88万円)=100万2,992円
月額:8万3,582円
※養育費算定表(表3)を用いた場合、養育費の月額は8~10万円
夫の年収600万円・妻の年収0円・子ども2人の場合
①義務者と権利者の基礎収入を求める
義務者の基礎収入=600万円×41%=246万円
権利者の基礎収入=0円
②子の生活費を求める
子の生活費=246万円×124÷224=136万1,786円
③養育費の金額を求める
養育費=136万1,786円×246万円÷(246万円+0円)=136万1,786円
月額:11万3,482円
※養育費算定表(表3)を用いた場合、養育費の月額は10~12万円
夫の年収1,000万円・妻の年収200万円・子ども3人の場合
①義務者と権利者の基礎収入を求める
義務者の基礎収入=1,000万円×40%=400万円
権利者の基礎収入=200万円×44%=88万円
②子の生活費を求める
子の生活費=400万円×186÷286=260万1,399円
③養育費の金額を求める
養育費=260万1,399円×400万円÷(400万円+88万円)=213万2,294円
月額:17万7,691円
※養育費算定表(表16)を用いた場合、養育費の月額は22~24万円
夫の年収1000万円・妻の年収0円・子ども3人の場合
①義務者と権利者の基礎収入を求める
義務者の基礎収入=1,000万円×40%=400万円
権利者の基礎収入=0円
②子の生活費を求める
子の生活費=400万円×186÷286=260万1,399円
③養育費の金額を求める
養育費=260万1,399円×400万円÷(400万円+0円)=260万1,399円
月額:21万6,783円
※養育費算定表(表16)を用いた場合、養育費の月額は24~26万円
まとめ
適正な金額の養育費を計算するには、その計算方法を正しく理解する必要があります。また、毎月の養育費に含まれない特別費用についても、その内容を検討した上で漏れなく請求しましょう。
弁護士に相談すれば、ご自身や配偶者の年収および子どもの状況に応じて、適正額の養育費を計算してもらえます。また、養育費を含む離婚条件の交渉についても、弁護士に一任することが可能です。
配偶者との離婚を検討している方、適正額の養育費を請求したい方は、弁護士にご相談ください。
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