不貞行為と時効|不貞慰謝料は何年前まで請求できる?民法改正の影響は?

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配偶者が不貞していることが分かったけれど、一体いつまで慰謝料請求できるのか?

そんなことが気になる方もいることでしょう。

そこで今回は、2020年の民法改正も踏まえながら、不貞慰謝料の時効の問題について網羅的に解説します。

不貞行為の慰謝料請求の時効とは

配偶者が不貞をした場合、配偶者は不貞相手に対して、いつまでも慰謝料を請求することができるわけでありません。

債権をはじめとする諸々の権利には消滅時効というものが定められており、一定期間請求しないでいると、これが完成して権利が消滅して行使することができなくなります。

不貞行為の慰謝料請求権も同じです。

では、不貞行為の慰謝料請求権の消滅時効はどうなっているか、以下で解説します。

不貞の慰謝料請求の3年の消滅時効

不貞の慰謝料請求の消滅時効は、民法で3年と定められています。具体的には、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年」と定められています。

配偶者に対する慰謝料請求権は、加害者=配偶者であるため、不貞の事実が分かった時点から消滅時効期間のカウントが始まります。

不貞相手に対する慰謝料請求権は、不貞相手が誰かが特定できない限りは、消滅時効期間のカウントは始まりません。

不貞の慰謝料請求の20年の消滅時効(改正前民法では「除斥期間」)

不貞の慰謝料請求にはもうひとつ20年の期間制限が定められています。

民法では、「不法行為の時から20年(権利を)行使しないとき」に権利が消滅するとされています。すなわち、不貞の事実を知ったのがいつであっても、不貞から20年が経過すれば、慰謝料請求をすることができなくなるということです。

この期間制限の性質については、2020年の民法改正前は「除斥期間」と考えられていました。

「除斥期間」というのは、消滅時効のように、内容証明を送って催告したり、訴訟を提起したりしても完成が猶予されず、また、支払いの猶予や分割払いの申し出といった「債務の承認」に当たる行為があっても更新(それまで進行していた期間がリセットされること)が生じないという性質をもつ期間です。

民法改正後は、この20年の期間も消滅時効と位置付けられ、内容証明の送付や訴訟の提起により完成猶予されることとなり、また、債務の承認により時効の更新も生じることとなりました。

時効を過ぎた場合も請求できることがあるか

では、時効期間が経過した場合に、不貞による慰謝料を請求することができるでしょうか。

時効は期間が満了しても、「時効の利益」を有する人がこれを援用しない限りは、完成しないとされています。

また、「時効の利益」を有する人が、時効期間満了後に、支払いの猶予や分割払いを申し込むなどした場合には、先にも述べたとおり時効が更新され、時効の主張をすることができなくなるとされています。

不貞のケースでは、不貞をした配偶者や不貞相手が「時効の利益」を有する人ということになります。

そのため、時効期間が経過した後も、配偶者や不貞相手が時効の主張をしない限りは、慰謝料の請求をすることができます。また、配偶者や不貞相手が「支払いを〇月〇日まで待ってほしい」「分割払いにしてほしい」などと言った場合には、時効が更新され、時効の主張をすることができなくなります。

そのため、上記のようなケースでは、時効期間を過ぎた場合でも慰謝料を請求することができます。

不貞行為の慰謝料請求の時効についてよくある質問

以下では、不貞行為の慰謝料請求の時効についてよくある質問について解説していきます。

時効について2020年の民法改正の影響は?

先ほども解説したように、2020年の民法改正により、20年の期間制限について、従来「除斥期間」とされ、内容証明の送付や訴訟の提起によっても完成が猶予されず、債務の承認による時効の更新も生じないと考えられてきたのが、明確に消滅時効を位置づけられることになりました。これにより、時効の完成の猶予や債務の承認による時効の更新も生じることとなり、請求する側にとってはメリットとなりました。

不貞が発覚して3年以上経過したけど、今も不貞が継続している場合、

慰謝料請求できるか?

不貞が一定期間継続している場合、消滅時効期間は最後の不貞行為の時からカウントされることとなります。

そのため、不貞が発覚して3年以上経過していても現在も不貞が継続しているのであれば、問題なく慰謝料請求をすることができます。

不貞に気づいてから3年とは?

不貞に気づいてから3年というのは、SNSで怪しい発言があったのを見つけたときから起算されるというわけではありません。

先にも述べた通り、不貞の慰謝料の消滅時効は「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年」から完成します。

具体的には、不貞が確実という証拠をつかみ、かつ相手方に対する請求に関しては相手の氏名や住所、連絡先などが判明し、請求が可能になった時点からカウントされます。

それほどあわてる必要はありませんが、案外すぐに3年は経過してしまうので、ある程度の証拠をつかんだら、興信所に調査を依頼して相手を特定することが必要でしょう。

不貞の時効の更新はできる?

先ほども述べましたが、「時効の更新」とは、それまで進行していた時効期間をリセットしてゼロからカウントをし直すことを指す言葉です。

時効の更新が生じるのは、①債務者が支払いの猶予や分割払いを求めるなど、「債務の承認」と評価される行為をしたとき、②訴訟を起こして確定判決を得たときとなります。

不貞の慰謝料請求もこの点は同じで、①配偶者や不貞相手が支払いの猶予や分割を求めてきたり、②慰謝料請求訴訟で勝訴判決が確定した場合には、時効が更新されることとなります。

まとめ

今回は、不貞慰謝料の時効の問題について網羅的に解説してきました。

3年という期間は、長いようで意外と短いものです。

慰謝料請求を確実に行うためには、配偶者に不貞をされていることがほぼ確実になった時点で、証拠を押さえること、相手方が誰か特定することを行う必要があります。

最近は、LINEのやり取りが証拠になることがありますが、配偶者が警戒してロックをかけるなどして中身が見られないことも少なくありません。

その場合には、費用はかかりますが、興信所に調査を依頼して、証拠をつかみ、相手を特定することが必要となります。

また、慰謝料請求は当事者が行うと、相手方が舐めてかかって放置されたり、あるいはかえってトラブルになることも少なくありません。

相手に逃げられないように請求するには、弁護士に依頼することが有効です。

配偶者の不貞でお悩みの方は、是非一度弁護士に相談することをおすすめします。

この記事を執筆した人
寺林 智栄 弁護士

NTS総合弁護士法人札幌事務所。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://www.attorneyterabayashi.com/

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