離婚と年金分割|手続きや注意点などをわかりやすく解説

法律相談

離婚をする際、婚姻期間中に配偶者が厚生年金保険(または共済年金)に加入していた場合には「年金分割」を請求できる可能性があります。

特に専業主婦(夫)の方や、配偶者より収入が少ない方は、年金分割によって利益を得られる可能性が高いです。老後の生活を安定させるためにも、正しく年金分割を請求しましょう。

今回は、離婚時の年金分割の概要・やり方・注意点、手続き時の必要書類、いつからもらえるか、代理人請求も可能か等をわかりやすく解説します。

  1. 年金分割とは|わかりやすく解説
    1. 離婚時に厚生年金の加入記録を分割すること|財産分与の一種
    2. 年金分割のやり方は2種類|合意分割・3号分割
        1. ①合意分割
        2. ②3号分割
    3. 年金分割を請求する際の注意点
      1. 請求期限は離婚の翌日から2年以内
      2. 年金事務所などでの請求手続きが必要
      3. 配偶者が婚姻中に厚生年金保険へ加入していない場合、年金分割は不可
      4. いつからもらえる?離婚後すぐに年金を受け取れるわけではない
      5. 自分の厚生年金保険料納付記録も分割される
      6. 事実婚の場合でも年金分割を請求できる
  2. 離婚時に年金分割を請求する手続き・必要書類
    1. 合意分割の手続き・必要書類|代理人請求も可能
        1. 標準報酬改定請求書(様式は以下のページからダウンロード可能)
        2. 基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
          1. 請求書にマイナンバーを記入したとき
          2. 請求書に基礎年金番号を記入したとき
        3. 婚姻期間等を明らかにすることができる書類
          1. 法律婚の場合
          2. 事実婚(内縁)の場合
        4. 請求日前1か月以内に作成された、両者の生存を証明できる書類
        5. 年金分割の割合を明らかにすることができる書類
        6. 請求者の本人確認書類
    2. 3号分割の手続き・必要書類
        1. 標準報酬改定請求書(様式は以下のページからダウンロード可能)
        2. 基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
          1. 請求書にマイナンバーを記入したとき
          2. 請求書に基礎年金番号を記入したとき
        3. 婚姻期間等を明らかにすることができる書類
          1. 法律婚の場合
          2. 事実婚(内縁)の場合
        4. 請求日前1か月以内に作成された、両者の生存を証明できる書類

年金分割とは|わかりやすく解説

「年金分割」とは、離婚する夫婦の間で、厚生年金保険料の納付記録を分割することを意味します。

離婚時に厚生年金の加入記録を分割すること|財産分与の一種

日本の年金制度は、国民年金と厚生年金の2段階制を採用しています(共済年金は2015年10月より厚生年金に一本化済)。

会社に常勤している方や、パートタイムでも一定の要件を満たす方は厚生年金保険に加入し、収入に応じて保険料を納付します。その結果、原則として65歳以降、国民年金に上乗せして厚生年金を受け取ることができるのです。

厚生年金の受給金額は、過去に納付した保険料の金額に応じて決まります。つまり、厚生年金の請求権(受給権)は、離婚時点で貯蓄などに類似した財産と捉えることができます。

夫婦が離婚をする際には、婚姻中に共同で取得した財産を公平に分ける「財産分与」を行います(民法768条、771条)。

婚姻期間中の厚生年金の加入記録も財産の一種と捉えられる以上、財産分与の一環として、夫婦間で公平に分け合うのが適切です。そのため、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録を分割する「年金分割」の制度が設けられています。

年金分割のやり方は2種類|合意分割・3号分割

年金分割のやり方には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

①合意分割

離婚する夫婦間の合意により、年金分割の方法・割合を決定します。

夫婦が共同で手続きを行うことが必要です。

参考:離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)|日本年金機構

②3号分割

婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録を、自動的に2分の1ずつに分割します。

配偶者の同意がなくても単独で請求できますが、請求権者は国民年金の第3号被保険者に限られます。また、3号分割の対象期間は、2008年4月1日以降に第3号被保険者であった期間のみです。

参考:離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構

年金分割を請求する際の注意点

離婚時の年金分割を請求する場合、誤解などによって予想していない不利益を被らないように、以下の各点にご注意ください。

請求期限は離婚の翌日から2年以内

合意分割・3号分割のいずれについても、請求期限は離婚の翌日から2年以内です。

この期間を過ぎると、年金分割の請求が認められなくなってしまう点に注意しましょう。また、3号分割を請求する場合を除き、年金分割に関する取り決めをせずに離婚を成立させることは避けるべきです。

年金事務所などでの請求手続きが必要

夫婦間で年金分割の方法を取り決めただけでは、年金分割の効果は発生しません。必ず年金事務所または年金相談センターで請求手続きを行う必要がある点に気を付けましょう。

年金事務所や年金相談センターの所在地は、以下の日本年金機構のページから探すことができます。

参考:全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

配偶者が婚姻中に厚生年金保険へ加入していない場合、年金分割は不可

年金分割によって分割できるのは、厚生年金保険料の納付記録のみです。

したがって、配偶者が婚姻中に厚生年金保険へ加入していない場合、年金分割の請求はできない点に注意しましょう。

いつからもらえる?離婚後すぐに年金を受け取れるわけではない

年金分割についていつからもらえるか気になる方も多いようです。

しかし年金分割は将来受け取ることができる厚生年金額を増やすための手続きです。

したがって、年金の受給開始年齢(原則として65歳)が早まるわけではなく、離婚後すぐに年金を受け取れるわけではありません。

自分の厚生年金保険料納付記録も分割される

夫婦ともに厚生年金保険へ加入している場合、ご自身の厚生年金保険料納付記録も年金分割の対象になります。

特に、ご自身の方が配偶者よりも給与収入が多い場合、年金分割によって将来受け取れる厚生年金額が減ってしまう可能性が高いので注意が必要です。

事実婚の場合でも年金分割を請求できる

年金分割は、事実婚(内縁)の場合でも請求できることがあります。

ただし、事実婚のケースで年金分割を請求できるのは、男女のいずれかに国民年金第3号被保険者であった期間が含まれている場合に限られます。

また、法律婚の場合とは必要書類が若干異なるため、詳しくは年金事務所などにご確認ください。

離婚時に年金分割を請求する手続き・必要書類

年金分割の請求は、年金事務所や年金相談センターの窓口で行います。請求手続きについて不明な点がある場合は、各窓口にご相談ください。

合意分割の手続き・必要書類|代理人請求も可能

合意分割の場合、年金分割の合意内容を離婚協議書などにまとめて締結します。

調停・審判・訴訟で年金分割の方法が決まった場合、調停調書・審判書・判決書が、離婚協議書の代わりとなります。

分割方法が決まったら、年金事務所や年金相談センターの窓口で手続きを行いましょう。合意分割請求の主な必要書類は、以下のとおりです。

標準報酬改定請求書(様式は以下のページからダウンロード可能)

参考:離婚時に年金分割をするとき|日本年金機構

基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
請求書にマイナンバーを記入したとき

マイナンバーカードなど

請求書に基礎年金番号を記入したとき

年金手帳または基礎年金番号通知書

婚姻期間等を明らかにすることができる書類
法律婚の場合

戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)または戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)

事実婚(内縁)の場合

同居の事実を示す住民票など

請求日前1か月以内に作成された、両者の生存を証明できる書類

戸籍抄本・戸籍の個人事項証明書・住民票のいずれか

※請求書にマイナンバーを記載すれば省略可能

年金分割の割合を明らかにすることができる書類

合意書・公正証書・調停調書・審判書・判決書など

請求者の本人確認書類

なお、年金分割は代理人請求も可能です。配偶者と共同で請求を行うことに抵抗がある場合は、弁護士や社会保険労務士に依頼するのがよいでしょう。

3号分割の手続き・必要書類

3号分割の請求手続きは、離婚成立後、年金事務所または年金相談センターの窓口ですぐに行うことができます。

3号分割請求の主な必要書類は、以下のとおりです。

<3号分割請求の提出書類>

標準報酬改定請求書(様式は以下のページからダウンロード可能)

参考:離婚時に年金分割をするとき|日本年金機構

基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
請求書にマイナンバーを記入したとき

マイナンバーカードなど

請求書に基礎年金番号を記入したとき

年金手帳または基礎年金番号通知書

婚姻期間等を明らかにすることができる書類
法律婚の場合

戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)または戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)

事実婚(内縁)の場合

同居の事実を示す住民票など

請求日前1か月以内に作成された、両者の生存を証明できる書類

戸籍抄本・戸籍の個人事項証明書・住民票のいずれか

※請求書にマイナンバーを記載すれば省略可能

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