結婚前の浮気が発覚した場合、結婚後に慰謝料請求は可能なの?

法律相談

結婚前の配偶者の浮気が結婚後に発覚した場合、そのことを許せないというのも無理はありません。

結婚前・結婚後を問わず、特定の相手がいるにも関わらず浮気をすることは倫理的に責められるべきですが、法律上の取り扱いは必ずしもそうなっていないことに注意が必要です。

もし結婚前の浮気について慰謝料請求をしたい場合には、婚姻中の浮気のケースよりも複雑な主張・立証が必要となりますので、弁護士に相談して慎重に準備を進めましょう。

この記事では、結婚前の浮気について、配偶者や浮気相手に慰謝料を請求できるのかどうかについて詳しく解説します。

結婚前の浮気を許せない!慰謝料請求はできる?

結婚前であっても、浮気をすることが間違っているのは、倫理的には異論がないところでしょう。

しかし、法律は必ずしも、結婚前の浮気に遭った被害者を守ってくれるとは限りません。

法律上は結婚前の恋愛は原則自由

結婚前の浮気を理由とした慰謝料請求(あるいは離婚請求)は、原則として認められません。

法律上、結婚している夫婦については、互いに相手に対して貞操義務を負うものとされています。

そのため、婚姻中に不貞行為をはじめとする浮気をした場合には、相手から損害賠償請求を受けることになるのです。

これに対して、結婚前の恋人同士の段階では、当事者は相手に対して法律上の貞操義務を負っていません。

つまり、倫理的にどうなのかは別として、たとえ恋人がいる人が浮気をして他の人と関係を持ったとしても、法律上はこれを責めることが原則としてできないのです。

例外的に慰謝料請求できる場合がある

「恋人同士である」というだけでは、浮気を不法行為として違法と判断するには至りません。

しかし、結婚はしていないとしても、「恋人同士」であること以上に強い関係性が当事者の間に認められる場合には、例外的に慰謝料請求が認められることがあります。

どのような場合に慰謝料請求が認められるのかについては、次の項目で詳しく解説します。

例外的に結婚前の浮気で慰謝料請求ができる場合とは?

結婚前の浮気について、配偶者や浮気相手に慰謝料請求ができるのは、「婚約関係」または「内縁関係」があった場合です。

婚約関係にあった場合

婚約とは、将来の結婚を真摯に約束することを意味します。

婚約は法律上の契約の一種ですので、実際に結婚をする前であっても、婚約が成立した後に浮気をした場合は、契約違反としての責任を問われるのです。

ただし、婚約契約書を作成したような場合でない限り、婚約は口約束によって行われるのが普通です。

そのため、婚約関係が成立していたかどうかは、さまざまな事情を総合的に考慮して判断することになります。

たとえば以下の事実が存在する場合には、婚約関係が認定される可能性が高いでしょう。

<婚約関係を認める方向に働く事実>

  • 婚約指輪のやり取りが行われた
  • 結納を終えていた
  • 両親や友人と結婚相手として顔合わせをしていた
  • 結婚式の準備を進めていた

など

これに対して以下のような場合は、結婚の約束が真摯なものではないため、未だ婚約が成立していないと判断される可能性が高いと考えられます。

<婚約関係が認められにくいパターン>

  • 自宅の居室内で、カジュアルな会話の中で結婚することに1度だけ合意した
  • 「結婚しよう」という趣旨の手紙を学生時代に送り合った
  • 性行為の最中や直後に結婚について合意した

など

婚約関係の存在を理由に、結婚前の浮気について慰謝料請求をする場合には、客観的に見て真摯な結婚の約束が行われると社会通念上判断できる程度にまで、婚約関係を基礎づける事実を積み重ねなければなりません。

内縁関係にあった場合

内縁(=事実婚)とは、法的に結婚はしていない(婚姻届を提出していない)ものの、実態としては夫婦同然の生活を送っている状態をいいます。

内縁関係と正式な婚姻関係の差は、単に婚姻届を提出しているかどうかの点のみです。

そのため内縁関係には、正式な婚姻関係に準ずる法的保護を与える必要があると解されています。

ただし内縁関係の場合、婚姻届の提出のような明確な基準がないので、婚約関係同様、さまざまな間接事実を積み上げて立証を行うことが必要です。

たとえば以下の事実が複数認められる場合には、内縁関係の存在が認定される可能性が高いでしょう。

<内縁関係を認める方向に働く事実>

  • 長期間にわたって同居していた
  • 生計を同一にしていた
  • 住民票の続柄欄に「未届の妻(夫)」という記載があり、内縁関係であることが明確化されていた
  • 互いに近い将来婚姻する意思を持っていた
  • 親族、友人などの周囲の人から「夫婦」と認識されていた
  • 社会保険などについて、どちらか一方が他方の扶養に入っていた
  • 子どもがいる

など

これに対して、以下のような場合は、当事者の関係性が夫婦同然と言えるまでには至っていないため、未だ内縁関係が成立しているとはいえないと判断される可能性が高いと考えられます。

<内縁関係が認められにくいパターン>

  • 同棲してからまだ日が浅い
  • どちらか一方の家に泊まることも多いが、週に半分以上は別々の家で過ごしている
  • 完全に生計が別である
  • 周囲には「恋人」として紹介している

など

内縁関係を立証する際にも、婚約関係と同様、客観的に見て内縁関係が成立していると社会通念上判断できる程度にまで、内縁関係を基礎づける事実を積み重ねることが必要です。

結婚前の浮気について慰謝料請求するために準備すべきことは?

訴訟を通じて結婚前の浮気についての慰謝料請求を行うためには、上記で解説した例外要件も踏まえて、慰謝料請求権を基礎づける事実を立証するための準備を慎重に行う必要があります。

実際に慰謝料請求をするためには、以下の各点に留意して準備を進めましょう。

 婚約関係・内縁関係を立証するための証拠を収集

結婚前の浮気についての慰謝料請求を行う前提として、まずは浮気が行われた当時の段階で、婚約関係または内縁関係が成立していたことを立証しなければなりません。

それぞれの関係性を立証するために有効な証拠の例としては、以下のものが挙げられます。

<婚約関係を立証するための証拠例>

  • 婚約指輪
  • 結納品、結納に関するやり取りのメールやLINE
  • 両親や友人など、婚約関係について話していた相手の陳述書
  • 結婚式場の資料や領収書、準備のメールやLINE
  • 顔合わせ食事会の写真

など

<内縁関係を立証するための証拠例>

  • 住民票
  • 銀行口座の振り込み履歴
  • 家計簿
  • 社会保険の書類
  • 両親や友人など、婚約関係について知っていた相手の陳述書

など

これ以外にも、個別の事情によって有効な証拠が存在するかもしれないので、弁護士に相談して色々な可能性を探ってみましょう。

不貞行為を立証するための証拠を収集

不貞行為の事実についても、証拠によって立証することが求められます。

しかし、不貞行為の現場を押さえた写真などの直接証拠はそうそう手に入らないので、不貞行為の事実を推認させる事実をどれだけ証拠によって立証できるかがポイントになります。

不貞行為の事実を立証するための証拠としては、以下のものが考えられます。

  • ホテルに入る時の写真や動画
  • ホテルや旅行などの領収書
  • 不貞行為の事実を窺わせるメールやLINEのやり取り、SNSの投稿

など

しかし、これらの証拠は相手が保管しているのが通常ですし、またはすでに破棄してしまっている可能性もあります。

もし証拠を集めることが困難な場合は、相手に浮気の事実を自白させることにより事態の打開を図りましょう。

浮気を自白した場面の録音や録画を証拠として確保しておけば、不貞行為の事実を示す直接証拠として、裁判になった際にも非常に有効に機能します。

感情的にならずに諭すように説得すれば、浮気に関する自白を引き出せるかもしれません。

念のため慰謝料請求権の消滅時効を確認

浮気に関する慰謝料請求権は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権として位置付けられます(民法709条)。

不法行為に基づく損害賠償請求権には、以下の消滅時効期間が設けられていることに注意が必要です。

  1. 被害者または法定代理人が損害および加害者を知った時から3年
  2. 不法行為の時から20年

上記のいずれかの期間を過ぎると、配偶者や不倫相手から消滅時効を援用された場合、慰謝料請求はもはや不可能になってしまいます。

念のため、消滅時効が完成していないかどうか確認しておきましょう。

結婚前の浮気でもらえる慰謝料の金額相場は?

結婚前の浮気について慰謝料請求が認められる場合、慰謝料の金額はおおむね50万円から300万円程度の範囲内に収まります。

正式な婚姻関係にある夫婦の間で浮気が起こった場合よりは、低めの金額になる傾向があるようです。

具体的な金額については、浮気された側がどれだけの精神的損害を被ったかに応じて決定されるので、ケースバイケースで異なります。

結婚前の浮気のケースでは、婚約関係または内縁関係が認められることを前提として、たとえば以下の要素が慰謝料の金額に影響します。

  • 不貞行為の頻度
  • 子どもの有無
  • 交際期間や内縁期間の長さ

など

できるだけ高額の慰謝料を獲得するためには、ご自身が被った精神的損害の大きさについて、上記の要素を踏まえて、裁判の場で効果的に主張・立証することが必要です。

弁護士のサポートを受ければ、慰謝料に影響する要素に関する証拠を適切に収集することで、裁判官に対して説得的な主張を展開することができます。

配偶者の結婚前の浮気のお悩みの方は、一度弁護士にご相談ください。

まとめ

結婚前の浮気について慰謝料を請求することは、恋人同士が互いに貞操義務を負わない以上、原則として認められません。

ただし、婚約関係または内縁関係が存在する場合には、例外的に慰謝料請求が認められる場合があります。

婚約関係または内縁関係がある場合に、不貞行為の事実や被った精神的損害の内容・金額について主張・立証を行う際には、弁護士に相談するのがスムーズです。

弁護士は、浮気に悩む依頼者の心情に寄り添って、依頼者が納得できる解決の実現に向けて尽力いたします。

配偶者が結婚前に浮気していたことが分かった方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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