離婚をする際に一度はきちんと決定したはずの「養育費」、できたら減額は避けたいものです。
しかし実際には、離婚後に元夫から「養育費を減額したい」と交渉をされることがあります。
交渉を拒否したら調停を起こすと言われた場合、どのような対応を取れば良いのか?また、そもそも養育費の減額は可能なのか?今回は養育費の減額請求について詳しく解説していきます。
元夫が養育費減額したいと言ってきた|認められるの?
離婚をするにあたって、話し合いや調停などによってきちんと養育費の金額を決定した場合であっても、減額せざるを得ないと考えられる相当な事情がある場合には、養育費の減額は可能となります。
では、実際に養育費が減額されてしまう理由にはどのようなものがあるのでしょうか?
減額が認められる理由|再婚した場合はどうなる?
裁判所で養育費の減額が認められるためには、減額の必要性が必要となります。
養育費の減額が認められる理由は、主に以下のようなものです。
- 相手方の年収が減額した
- 相手方が失業した
- 相手方の扶養家族が増加した
- 自分方の収入が増加した
- 自分方が再婚した
など
また減額の必要性以外にも、養育費の金額に合意した当時には予見することができなかった変化が必須の条件となっています。
そのため、⑤の自分方が再婚した場合であっても、自分に交際相手がいたことを相手が知っていて、再婚するという予見があったのであれば、再婚が養育費減額の理由になることはありません。
減額が認められない理由
一方でどんなに減額したくても、減額が認められない理由も存在します。
以下、例を見ていきましょう。
- 面会交流ができない
- 相場よりも自分が支払っている養育費が高いと気づいた
- 事前に予想することができた年収の減額
- 自ら転職した・仕事をやめた
など
このような理由の場合には、養育費の減額請求が認められることはありません。
養育費減額調停とは
元夫から養育費の減額について交渉され、その後元夫婦間での話し合いを行なっても減額についての意見がまとまらなかった場合には、養育費減額調停が行われます。
養育費減額調停の流れ・管轄・期間など
養育費の減額について合意が得られなかった場合、養育費減額調停によって裁判所が間に入ることとなります。
具体的な流れは以下のとおりです。
調停の申し立て
減額をしたい相手方が家庭裁判所に調停を申し立てると、調停申立書のコピーが家庭裁判所から送付されます。
その後家庭裁判所によって調停の期日が決定され、調停期日呼び出し状が送付されます。
養育費減額請求調停の流れ
養育費減額調停は以下の流れで進みます。
第一回の調停
↓
第二回以降の調停
↓
調停の終了
第二回目以降の調停に関しては、話し合いがまとまるまで月1回のペースで行われることとなります。
調停では、どのような理由で養育費の減額を請求しているのかなどを考慮し、減額請求の妥当性が話し合われます。
ただし「養育費減額請求調停」は裁判ではなく、あくまでも調停に過ぎませんので、元夫婦の間で合意が得られない場合には、調停は不成立となります。
では調停不成立となってしまった場合には、どのような流れとなるのでしょうか?
調停不成立で審判になった場合
親2人の間で話し合いがまとまらなかったとしても、養育費は子どもの成長や将来に関わる重大な役割を持つものです。
そのため、調停が不成立となってしまった場合には審判へと移行します。
審判では、今までの証拠や家庭裁判所調査官の記録などを参考にして、裁判官が養育費減額の妥当性を判断することとなります。
この判決に不満がある場合には、2週間以内であれば不服申し立てをすることが可能です。
減額させない方法|調停のときに気をつけること
では、できる限り養育費の減額を回避するためにはどのような点に気をつければ良いのでしょうか?
一番のポイントは「給料明細や源泉徴収表などの証拠を適切に用意する」ことです。
前述のように養育費の減額請求の可否を判断するためには、相手方の収入の増減や自分方の生活の状況が判断材料の1つとなります。
そのため、相手の収入が安定している・もしくは増加している場合や、自分と子供の生活が現時点で余裕のないものであることを証明する必要があります。
そのためにも、相手方の給料明細や源泉徴収票の提示要求も手段の一つとして覚えておいてください。
養育費減額の相場と対策
実際に養育費をどの程度減額するのか決定しなくてはならない時に、最も気になるのはその相場ではないでしょうか。
ここでは養育費減額の相場と合わせて、どのような対策を取るのがベストなのか確認していきましょう。
減額の相場の計算方法
気になる相場ですが、どの程度減額されるかというのは、
- 相手の収入
- 自分の年収
- お互いの生活状況
などによって総合的に判断され、各々によって金額は異なりますので、基本的にはっきりとした「相場」というものはありません。
一般的には「養育費算定書」を使うことで相場に値するものは求められますが、再婚すると状況が変わるため、新しく計算し直す必要があります。
具体的には、扶養義務者と権利者の基礎収入を算定し、基礎収入率をかけます。そしてさらにそこから養育費を算出するための計算をしなくてはならず、算定は少し複雑です。
減額されないようにするには
お子さんのための大切な養育費を減額されないようにするには、
- 夫の収入などの証拠をしっかり集める
- 養育費がもらえないと困るという、自分の状況を表す証拠を用意する
など証拠集めが必要となります。
養育費減額請求調停の経験が豊富な弁護士に相談し、調停を有利に進めるためのアドバイスを受けることも1つの方法でしょう。
特に調停が不成立となり審判に移行した場合、判決を出す裁判官が参考にするのは、調停での経緯や提出された資料です。
そのため、調停の進め方や提出する証拠は審判においても重要な判断材料となりますので、弁護士に相談する場合にはできる限り早い段階で相談することをおすすめします。
元夫と会いたくない|調停を欠席してもよいか
調停というのは裁判所を間に入れた話し合いの手続きですので、弁護士に依頼している場合であっても、基本的には本人が出席した方が望ましいと言えます。
元夫とはもう顔を合わせたくない…という方もいらっしゃると思いますが、調停は調停員を介して行われますので、直接顔を合わせることはありません。
ちなみに調停での話し合いの日に、正当な理由なく欠席した場合には、5万円以下の過料に処せられます。
ただし実際には過料の支払いを命じられるのは異例のケースで、基本的にはないと思って大丈夫です。
また調停を欠席したからといって、欠席側に不利になるような結論が出されることはありませんので安心してください。
費用はどうなるの?
では元夫に養育費減額請求をされた場合、費用はどのくらい必要なのでしょうか?
調停費用
養育費減額請求調停を申し立てた側の場合、収入印紙1200円分(子ども1人につき)や連絡用の郵便切手などが必要となります。
しかし、申し立てられた側であれば、基本的に家庭裁判所への交通費以外の出費はありません。
弁護士依頼する費用はどのくらいか
では元夫から養育費減額の請求を受けて弁護士に依頼した場合、費用の相場はどのくらいなのでしょうか?
弁護士費用は基本的に、「相談料」「着手金」「報酬金」「その他(実費・日当など)」の4つで構成されています。
養育費減額請求に関する依頼の場合、4つの費用の各相場は以下のとおりです。
相談料:1時間あたり5,000円〜10,000円
着手金:20〜40万円
報酬金:20〜40万円
その他:弁護士の交通費や、遠方の裁判所に弁護士が出張する場合の日当など
これらを合計し、相場は40〜50万円程度のケースが多いですが、弁護士費用は弁護士事務所や弁護士によって異なります。
弁護士に依頼する場合には、あらかじめ必要な費用を確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、元夫から養育費の減額を請求された時の対処法について改善しました。
離婚する際に決定した養育費であっても、それぞれの収入や生活状況などによって減額することは可能です。
出来る限り減額を回避するためには、調停や審判に向けて、自分や相手方の状況を細かく把握するだけではなく、証拠を揃える必要があります。
調停や審判を前に不安を抱えている方は、離婚問題や養育費減額に関する専門的な知識を持つ弁護士に相談することをおすすめします。