離婚の手続はただでさえ面倒なことが多いですが、子供を連れていくと、更に考えなければいけないこと、しなければいけないことが増えます。
今回は、女性が子どもを連れて離婚する場合に、考えるべきこと、しなければならないことについてお話しします。
離婚協議や調停の際に決めておくべきこと
養育費
夫と離婚協議をしたり、あるいは調停を起こして裁判所での手続きを進めるにあたり、まず考えなければならないのは養育費です。
早く離婚したいばかりに、離婚時に養育費を決めない人もいます。
しかし、離婚後に請求しようと思っても、夫の居所がわからなくなっていたり、夫に支払う気がなくなり、もらえなくなることも少なくありません。
養育費は離婚と同時に決めておくことが大切です。
養育費の相場については、裁判所が使用している養育費算定表が参考になります。子どもの年齢や人数、夫婦の収入を元に算定されたものが表になっています。
離婚後にかかる子供のための費用のことを考えて、安易に決めず、最低でも養育費算定表上の金額をもらえるようにしましょう。
養育費算定表は、以下のURLからご覧ください。
面会交流
離婚した夫に子どもを会わせたくないと思う女性も少なくないでしょう。
しかし、離婚しても夫は子供の父であり、面会する権利を持っています。夫が希望しているにもかかわらず、虐待などよほどのことがない限り、子どもを会わせないことはできません。
離婚するときに、離婚後、どのような頻度で、1回につきどれくらいの時間、面会交流を実施するか、たまには宿泊付きの面会交流も認めるかなどを決めることになります。
面会交流については、なるべく会わせたくない女性側と、子供とは会いたい夫との間で、頻度や時間について折り合いがつかない場合も少なくありません。
その場合は、調停の場で、調停委員や裁判所の調査官が仲介したり、調査したりして決めることになります。
財産分与
一見、子供の問題と関係なさそうな財産分与ですが、実は、子供を育てていくためにはとても重要です。
女性の収入が少ない場合には当面の生活費としての意味がありますし、また進学などまとまったお金が必要な時があるからです。
財産分与は、基本的に、婚姻後に夫婦双方の名義で取得した財産の中から、相続財産などの特有財産を除いた合計額を2分の1にして行います。
離婚を急いで財産分与を適当に済ませてしまうと、後で後悔することになりかねません。
離婚を考え始めたら、預金が株などの夫の財産をしっかり把握するように努め、離婚時にはきちんと2分の1の権利を主張できるようにしておきましょう。
離婚後にすべきこと
子供と一緒の戸籍の作成
まず自分の戸籍を作る
法律上の婚姻をする多くの場合、女性が男性の戸籍に入ります。
そうすると、離婚したら、女性は男性の戸籍から抜けることとなります。
子供を連れて離婚して男性の戸籍から抜ける場合、親権者が女性側になったとしても、自動的に女性と子どもの戸籍が作られるわけではありません。
自分と子どもが一緒の戸籍を作るための手順を踏む必要があります。
まずしなければならないことは、女性が自分の戸籍を作ることです。
離婚すると、親の戸籍に入るか、自分独自に新しい戸籍を作るか、どちらかを選ぶことができます。
日本では、3世代が一緒の戸籍に入ることはできないと定められているので、子供と一緒の戸籍を作るためには、まず自分だけの新しい戸籍を作ることが必要です。
その方法は難しいものではありません。
離婚届に、「もとの戸籍に戻る」「新しい戸籍をつくる」という欄があり、チェックボックスがついているので、後者にチェックを入れれば足ります。
離婚届は、協議離婚の場合だけでなく、調停離婚の場合も記入することになるので、同じ方法で新しい戸籍を作ることができます。
新しい戸籍は、申請してから通常2週間ほどでできます。
なお、婚姻時に男性が女性の戸籍に入った場合には、離婚の場合、男性が女性の戸籍から抜けるだけで、女性と子どもだけの戸籍ができるので、わざわざ新しい戸籍をつくる必要はありません。
子供を自分の戸籍に入れる
新しい戸籍を作ったら、今度は子供を自分の戸籍に入れる手続をすることが必要になります。
子供を自分の戸籍に入れるためには、まず、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てることが必要です。
申し立てる先は、子供の住所地(住民票上の住所地となります。)を管轄する家庭裁判所となります。
費用は800円で、申立と同時に収入印紙で納めることになります。また、連絡用の郵便切手が必要となりますが、裁判所によって若干金額に違いがありますので、管轄の裁判所に事前に問い合わせることをお勧めします。
提出書類は以下のとおりです。
ア 申立書
イ 子供の戸籍謄本
ウ 父と母の戸籍謄本
なお、子供が15歳未満の場合には、母である女性が親権者(法定代理人)として申立をしますが、子供が15歳以上の場合には、子供自身の名前で申立てをすることになります。
申立書の書式や必要書類などについては、裁判所ウェブサイトを参照してください。
申立後許可が出るまではあまり時間がかからず、例えば、東京家庭裁判所の場合には、直接申立書を提出しに行くと、1時間ほどで許可が下りる場合も少なくありません。
許可の審判が出たら、審判書謄本を持参して、子供の本籍地又は親権者となった女性の住所地の市町村役場に届出をすることが必要です。
審判書の他に、戸籍謄本が必要となる場合もありますので、届出の前に、役場に確認しておくようにしましょう。
なお、女性が離婚に伴い旧姓に戻した場合、この手続で、子供の姓も女性の旧姓になりますので、別途姓を同じにするための手続は必要ありません。
教育環境の変化に伴う手続を行う
子供が幼稚園や公立小学校・中学校に通っている場合、離婚後に引っ越した先によっては、転園や転校の手続が必要になる場合があります。
特に公立小学校や中学校は、指定された通学区域に居住していることが在校するための要件になっていることが通常です。そのため、引っ越しに伴い、転校の必要があるかどうかは、事前に学校や教育委員会に確認しておく必要があります。
転校・転園の必要がある場合には、転校の日程などを事前に転出する学校や転入する学校と打ち合わせ、段取りを相談しておくようにしましょう。
公的な支援を受ける
子供を連れて離婚するということは、夫の収入なしで、その後子供を育てていかなければならないということです。
養育費をもらったとしても、それで十分とはいえないことも多いでしょう。
そこで、公的な支援を活用することが重要となります。
まず、公的手当としては、児童手当や児童扶養手当、特別児童扶養手当、児童育成手当などがあります。
このうち児童手当は、離婚に関係なく未成年の子に支給されるもので、児童扶養手当、児童育成手当は、離婚や死別により父または母がいない児童を養育している人に支給されるものです。また、特別児童扶養手当は、子供に身体又は精神の障害がある場合に支給される手当となっています。
子供を連れて離婚したら、住んでいる地域で、自分たちのケースではどのような手当を受給できるか確認し、可能なものについてはもれなく申請するようにしましょう。
また、医療に関する支援として、ひとり親家庭医療費助成制度というものがあります。これは、ひとり親やその子供、あるいは両親がいない子供を養育している人が病院などで診察を受けた際に、健康保険の自己負担分の一部を居住している自治体が助成するという制度で、子連れ離婚した女性に適用があるものです。
子供は病院にかかることが多く、その費用も家計を圧迫します。支給を受けられるよう手続しましょう。
上記以外にも、自治体独自のひとり親の支援制度が設けられている場合もあります。自分が住む自治体で、どのような支援が受けられるのか、できれば離婚前に確認しておくのが良いでしょう。