配偶者から離婚調停を申し立てられた場合、離婚したくない・応じたくないという思いのあまり、出席を拒否する方がいらっしゃいます。
たしかに、離婚調停は無意味だと言って拒否して、出席しないことはあり得る対応の一つですが、その後は離婚訴訟に発展する可能性が高いことに注意が必要です。
今回は、離婚したくない場合、応じない場合に、申し立てられた離婚調停を拒否することの可否や、離婚調停が不成立となった後の手続きなどについて解説します。
離婚調停を申し立てられた! 応じたくない!拒否できるのか?
配偶者に申し立てられた離婚調停への出席を離婚したくないからといって拒否することは、必ずしもお勧めできる対応ではありません。出席拒否を貫くとしても、離婚調停の概要と欠席した場合の取り扱いについては理解しておきましょう。
離婚調停とは
離婚調停とは、離婚の可否や離婚条件を夫婦が話し合う手続きで、家庭裁判所において行われます。調停委員が仲介者となって、夫婦双方から個別に言い分を聴き取り、お互いが納得できる条件での離婚成立を模索します。
夫婦間で合意が成立すれば、その内容を記載した調停調書が作成され、調停調書の内容に従って離婚がなされます。
夫婦双方が離婚そのものについて合意しているケースでは、離婚調停を通じて着々と離婚条件が決定され、いずれは合意(調停成立)に至ることが多いです。
これに対して、離婚そのものについて意見が食い違っている場合には、調停成立の見込みなしとして、短期間で離婚調停が打ち切られるケースが大半です。
離婚調停が成立するのは、あくまでも夫婦間における合意が調った場合のみであり、いずれか一方でも離婚したくないといって拒否すれば離婚調停が成立することはありません。
離婚調停は無意味だと言って、欠席してもよいのか?
離婚そのものに応じないつもりの場合は、離婚調停への出席自体が無意味であるとして、最初から離婚調停に一切出席しない方がいらっしゃいます。
法律上は、家庭裁判所の呼び出しに応じずに離婚調停を欠席した場合、「5万円以下の過料」に処されることになっています(家事事件手続法258条1項、51条3項)。
しかし実務上は、離婚調停の欠席に対して過料の制裁が課されることはまずありません。したがって、離婚調停を欠席しても、それほど大きな問題が生じることはないと思われます。
ただし、離婚調停への欠席を続けたとしても、それで離婚を一切拒否できるわけではありません。離婚調停を拒否する態度を貫いていると、離婚訴訟を提起される可能性がある点に注意が必要です。
離婚調停が不成立になった後の手続き|拒否し続けた場合どうなる?
離婚調停が不成立となったその後、配偶者の意向・方針にもよりますが、その後は離婚訴訟に発展する可能性があります。
離婚訴訟は長期化するケースが多く、ご自身で対応するのは非常に難しいことにご留意ください。
離婚調停が不成立になると、離婚訴訟を提起される可能性あり
離婚調停が不成立となった後、配偶者があくまでも離婚を望むのであれば、離婚訴訟を提起してくる可能性が高いです。
離婚訴訟において、裁判所が法定離婚事由の存在を認定すれば、離婚を認める判決が言い渡されます。法定離婚事由は、以下の5つです(民法770条1項)。
<法定離婚事由>
-
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
ただし、配偶者が離婚訴訟を提起してくるかどうかは、配偶者の意思や経済状態、離婚に関する経緯など、さまざまな事情によって左右されます。
たとえば以下のような場合には、配偶者はあえて離婚訴訟を提起せず、夫婦関係の継続を選択するかもしれません。
- 離婚への意思がそれほど固くない場合
- 弁護士費用を負担するのが大変な場合
- 法定離婚事由が認定される可能性が低い場合
- 配偶者自身が有責配偶者に該当する場合(離婚請求が原則として認められない)
など
離婚調停の段階でどのように対応するかについては、仮に調停不成立となった場合に離婚訴訟を提起される見込みがどの程度あるか、配偶者の態度などから分析して判断すべきでしょう。
離婚訴訟のデメリット・注意点
配偶者によって離婚訴訟が提起されると、訴訟手続きへの対応を避けることはできません。
訴訟は話し合いの手続きではなく、裁判所の公開法廷で主張を戦わせる手続きです。そのため、離婚調停よりも離婚訴訟の方が、当事者にかかるストレスは大きくなることが予想されます。
また、離婚訴訟は長期化することが多く、1年以上かかるケースも少なくありません。長期間にわたって離婚訴訟を戦うことは、一般の方にとっては非常に大変です。
さらに、訴訟手続き自体が専門的かつ複雑なルールで成り立っているため、適切に対応するためには弁護士への依頼が推奨されます。
このように、離婚訴訟に突入すると、配偶者との間で徹底的に争わざるを得なくなります。そうなると、配偶者との関係修復はますます困難となり、婚姻関係を継続するメリットも失われてしまう可能性が高いでしょう。
離婚調停を拒否して離婚訴訟に場を移し、徹底抗戦を貫くのが本当に良いのかどうかは、慎重に検討して判断することをお勧めいたします。
離婚調停・離婚訴訟の対応を弁護士に依頼するメリット
配偶者との間で離婚調停・離婚訴訟の手続きをとることになった場合は、弁護士に代理人を依頼することをお勧めいたします。
離婚調停では調停委員に対して、離婚訴訟では裁判官に対して、ご自身の主張を説得的に伝えることが有利な結果に繋がります。そのためには、法的な観点から論点を整理し、筋の通った主張を行うことが大切です。
弁護士に相談すれば、調停委員や裁判官に伝えるべき主張の内容や組み立て方などにつき、有益なアドバイスを受けることができるでしょう。
ご自身の口からはうまく伝えられない場合でも、弁護士に適切な言葉で主張を代弁してもらえば、調停委員や裁判官に理解してもらえることが多いです。
さらに弁護士を代理人として手続きに臨めば、調停委員や裁判官が何を考えているのか、それぞれの反応を見ながら対応方針を微調整できるため、有利な結果を得られる可能性がいっそう高まります。
離婚問題に悩む当事者の方にとって、弁護士への相談・依頼は、良い形で離婚問題を解決するための第一歩です。配偶者から離婚を請求された方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
まとめ
離婚調停への出席を拒否し続けると、調停は不成立となりますが、その後に離婚訴訟を提起される可能性があります。
離婚訴訟は長期化しやすく、大きなストレスのかかる専門的な手続きです。そのため、ご自身だけで対応することは難しく、弁護士への依頼が強く推奨されます。
配偶者によって申し立てられた離婚調停にどう対応するかについては、離婚訴訟に発展することのデメリットも踏まえつつ、その後の見通しを念頭に置きながら判断すべきでしょう。
離婚調停に関する対応の仕方に悩んでいる方は、弁護士にご相談ください。
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