離婚協議書が無効になるのはどんな場合?離婚協議書作成の注意点について弁護士が解説

法律相談

配偶者と離婚することになり、離婚の条件等について離婚協議書を作成しようとしたものの、具体的にどのような内容を盛り込んだらよいかわからなかったり、完成した協議書が法的に問題ないのか気になったりする方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、離婚協議書の基本について解説した後、離婚協議書が無効になる場合や作成上の注意点について解説していきます。

離婚協議書とは

離婚協議書は、離婚を希望する夫婦が、離婚方法や条件について合意した内容を記載した書面です。

このパートでは、まず、離婚協議書の基本的な点について解説をしていきます。

離婚協議書を作成するのはどのような場面か

離婚の方法には、主に協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがあります。

協議離婚とは、裁判所の手続き経ずに、夫婦間の話し合いで離婚する場合です。

調停離婚は、家庭裁判所の調停手続で離婚する場合です。

そして、裁判離婚は、裁判を起こして離婚する場合です。

離婚協議書は、このうち、裁判所での手続を経ないで行う夫婦間の話し合いにより合意した離婚の方法や条件を記載した書面のことを指します。

離婚協議書を作成するメリット

協議離婚の場合は、役所に提出する離婚届だけを作成して、離婚協議書は作成しない場合も少なくありません。

このような場合、養育費や子どもとの面会交流は、口約束するだけで証拠が残りません。そのため、約束が守られないときには、これを求める手段がないことになります。

協議書を作成しておけば、約束した内容の証拠となるため、相手に約束違反があった場合、調停や裁判を起こして、約束を守るよう求めることが可能となります。

離婚協議書を作成する時期

離婚協議書は通常、離婚届の提出前に作成しますが、届出後に離婚後の取決めについて話し合いをして作成することも可能です。

ただ、離婚をした後に作成しようとすると、養育費や慰謝料などをしたくない配偶者が逃げてしまって結局協議書を作成できないという場合もあるので、離婚に先立って作成しておく方が良いでしょう。

離婚協議書に記載する内容

離婚協議書には以下のような内容を記載します。

ア 離婚そのものに関する内容

    • 離婚の合意
    • 離婚届の提出日や提出者
    • 清算条項(離婚協議書に記載があること以外に当事者間に権利義務がないことの確認)

イ 金銭に関する内容

    • 財産分与
    • 慰謝料
    • 年金分割
    • (別居している場合)離婚届提出までの婚姻費用

ウ 子供に関する内容

    • 親権者
    • 養育費
    • 面会交流

離婚協議書の形式について

手書きでも問題ないか

離婚協議書は手書で作成しても効力に影響はありません。

ただし、判読が難しい書体などで書かれた場合、条項の内容がわからないとして、無効になる恐れもあります。

手書きで離婚協議書を作成する場合には、読みやすいきれいな文字で作成することが必要です。

公正証書にした方が良いか

先ほども解説したとおり、離婚協議書を作成すれば、約束違反があった場合に調停や裁判を起こすことが可能ですが、逆に言えば、そのような手間をかける必要があることになります。

しかし、公証役場において公正証書を作成しておけば、約束違反に対して、別途調停や裁判を起こさずに、直接権利実現することが可能になります。

公正証書に強制執行認諾文言というものを付しておけば、慰謝料や養育費の不払いがあった場合に、別途裁判や調停を起こさなくても、相手の給与や預金に対して強制執行をして差し押さえてしまうことができるのです。

費用はかかりますが、このメリットはとても大きいものです。離婚協議書を公正証書にした方が良いことは間違いありません。

離婚協議書が無効になる場合

せっかく離婚協議書を作成しても無効になってしまっては意味がありません。このパートでは、離婚協議書が無効になる場合について解説します。

協議書全体が無効になる場合

離婚自体が無効の場合や、離婚が取り消された場合には、当然のことながら、協議書全体が無効となります。

離婚自体が無効になる典型的な例は、夫婦の一方が離婚に合意していないのに、他方が無断で離婚届を提出する場合です。夫婦の一方に離婚意思がないため、離婚は無効となります。

また、離婚が取り消される場合とは、相手方や第三者の詐欺や脅迫で離婚に同意した場合です。このような離婚については、その離婚が取り消されれば、作成された協議書は無効になります。

なお、上記の場合、いったんは離婚届が受理されて離婚が成立してしまいます。離婚の無効や取消しを主張する場合には、離婚届提出後に裁判を行う必要があります。

協議書の一部の条項が無効になる場合

条項が公序良俗に反する場合

条項の一部が公序良俗(国家や社会にとっての利益や人間生活の秩序)に違反する場合には、その条項が無効となります。

具体的には、①養育費や面会交流の請求権を放棄する、再婚した場合には親権者を変更するなどといった子どもの福祉に反する内容の条項、②再婚禁止、離婚後に婚姻時の姓を使用することの強制など離婚後の相手の行為を強く制限する条項が該当します。

条項が抽象的過ぎる場合

また、意味内容が不明確で、立場によってどのようにでも理解できるような抽象的な条項は、取決めの意味がないとして無効となります。

離婚協議書の作成は弁護士に相談を

以上からわかるとおり、離婚協議書の作成においては、配慮しなければならないことも少なくなく、夫婦間の話し合いだけで作成してしまっては、後で問題が生じることも少なくありません。

また、離婚後に、協議書の内容が自分にとって不利だったとわかっても、合意の内容を改めることは、とても困難です。

そこで、離婚協議書を作成する場合には、ぜひ一度弁護士に相談することをおすすめします。

相手から提案された離婚協議書に問題はないか、あるいは、自分にとってあまりにも不利ではないか、無効になることはないか、公正証書にした方が良いか、など、離婚に詳しい弁護士であれば、的確なアドバイスをすることができます。

また、協議離婚を弁護士に依頼すれば、相手方との交渉というストレスから解放されます

どうぞお気軽に弁護士にご相談ください。

この記事を執筆した人
寺林 智栄 弁護士

NTS総合弁護士法人札幌事務所。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://www.attorneyterabayashi.com/

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