- 夫の不貞相手と話したけれど、シラを切られてしまった。
- このままシラを切り通されたら、慰謝料を一銭も請求できないのか?
配偶者に不貞をされて、こんな不安に駆られる方もいらっしゃることでしょう。
そこで、今回は、相手が不貞行為を認めない場合にどうするべきかなどについて、解説をしていきます。
相手が不貞行為を認めないパターンとその対応
相手が不貞行為を認めない理由のパターンは様々です。以下では、代表的な例を3つ紹介します。
不貞行為そのものを否定する
性交渉をしている決定的な証拠を握られていない自信が相手にある場合には、不貞行為は一切していないと真っ向から否定してくる場合があります。
この場合は、不貞の慰謝料を請求するにあたっては、慎重に証拠を収集する必要があります。
夫婦関係の破綻を主張する
性交渉をしたことは認めるものの、夫婦関係はすでに破綻しているので、不貞には当たらないという主張をする場合です。
実務では、別居期間中に夫婦の一方が配偶者以外の人と性交渉を持ったとしても不貞には該当しないと判断されるのが一般的です。
しかし、単に夫婦関係が良くないというだけでは、夫婦関係が破綻しているという主張はとおりません。
相手がこのような主張をしてきた場合には、配偶者が不貞相手に対して「夫婦関係が悪い」「もうすぐ離婚する」などと言っていた可能性が相当程度あります。しかし、これだけで不貞行為を正当化できるわけではありませんので、あまり心配する必要はありません。
配偶者が既婚者だと知らなかったと主張する
性交渉をしたことは認めるものの、配偶者から結婚していないなどと言われ、既婚者だと知らなかったと主張してくる場合もあります。
不貞をする場合に独身だと偽られることは良くありますが、この場合も、不貞を正当化できないことが多いといえます。
独身だと言われてはいても、相手の年齢や、結婚指輪をしている、スマートフォンの待ち受け画面が子どもの写真だった、などの事情から、結婚していることが認識できる場合も少なくなく、そのような場合には、少なくとも相手には、「結婚していたとしてもかまわない」といった気持があって、性交渉に及んだといえるのです。
相手が不貞行為を認めない場合にできること・すべきこと
相手が不貞行為を認めない場合でも慰謝料請求は可能
相手が不貞行為を認めない場合には、慰謝料請求ができないのではないかと思う方もいるかもしれません。
しかし、たとえ相手が認めなかったとしても、慰謝料請求は可能です。
ただ、相手が不貞行為をしたことは、請求する側が証明しなければなりません。
そこで、不貞の証拠をどのように集めるのかが問題となります。
なお、不貞の証拠が必要なのは、不貞行為そのものを否定する1‐1のケースのみと思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。
相手が不貞行為自体は認める場合でも、その期間や頻度、回数について、過少に主張する場合がありますので、どのようなケースでも、不貞の証拠は可能な限り集めたほうが良いといえます。
証拠集めの方法
先にも述べたとおり、不貞の慰謝料請求では、証拠集めが重要となります。以下ではどのような方法で証拠集めをするのが良いか、解説します。
配偶者のSNSや持ち物のチェック
近年、不貞の証拠として最も重要と言えるのが、LINE等を中心とする配偶者のSNSです。筆者自身も、LINEを証拠として慰謝料請求訴訟に提出して、不貞が認定されたことが何回かあります。
不貞相手との会話の中には、宿泊付で出かけたことや性交渉したこと、性交渉に誘う様子に関するかなり生々しいやり取りが含まれていることも少なくありません。
配偶者のスマートフォンのパスワードなどがわからなければ見ることはできませんが、意外に無防備な場合も少なくなく、簡単に中身を見ることができるばあいもあります。
LINEに関しては、やり取りを自身のスマートフォンやカメラで撮影していくという方法もありますが、テキストデータにして、自分のメールアドレスに送信することも可能です。
また、持ち物の中に、相手からのプレゼントと思しきものや、相手へのプレゼントを買った時の領収書などが入っている場合もあります。それだけで有効な証拠になるとまではいえませんが、他の証拠を補充する意味はあります。そのようなものを見つけたら写真を撮っておくと良いでしょう。
興信所に依頼
不貞の証拠収集の王道は、興信所に依頼して、配偶者と不貞相手を尾行してもらい、その行動を写真に撮って報告書という形でまとめてもらうことです。
SNSで証拠を取得できない場合には、不貞相手と一緒にホテルに入っていった、路上で抱擁したりキスをしたりして、その後相手の部屋に入って何時間も出てこなかったといった「性交渉をしていることは確実」といええる証拠を手に入れることが、慰謝料請求には必須となります。
そのためには、プロである興信所に任せることが必要です。
ただし、実際には、興信所による調査によって不貞の証拠を得られるのは、「このときに二人で出かけるのがほぼ確実」といええる場合に限定されます。
例えば、「友人とゴルフに行く」「出張で外泊する」などと配偶者が予定を告げていた場合などに、興信所に調査を依頼するのが証拠取得の成功率をあげるためには重要です。
また、興信所の調査費用は一般的に高額なので、少しでも安いところに頼みたいと思う方も少なくないでしょう。
しかし、費用が安いところは、人手をあまりかけずに調査を実施することが多く、そのために二人を途中で見逃してしまい、肝心な証拠を取得できないこともあります。
値段だけで興信所を決めないことが必要です。
弁護士への依頼
不貞行為を認めない相手に慰謝料を請求する場合には、弁護士への依頼を考えましょう。
弁護士に依頼すると、証拠が十分かどうか、有効な戦略はどういうものかを考えてくれることができます。
なにより、精神的ストレスが大きい不貞相手との交渉を任せることができます。不貞相手との交渉は、双方感情が高ぶって大きなトラブルになる懸念もありますが、弁護士に依頼すれば、そのようなリスクも回避できます。
不貞相手が、強く自身の責任を否定し、示談交渉に応じようとしない場合には、裁判を起こすことになります。裁判で提出する書面の作成や、尋問などには専門的な知識や技術が必要で、一般の方が対応するのは難しいものです。
さらに、裁判所が不貞を認定できる証拠が足りない場合でも、「最低でも交際はしており、そのために夫婦生活の平穏が害された」などと主張を切り替えて、ある程度の慰謝料を引き出すといった、細やかな対応も可能になります。
不貞の慰謝料請求を弁護士に依頼することは、とても有用なことだといえるでしょう。
相手が不貞行為を認めない場合にしてはいけないこと
相手に暴言を吐くことはやめましょう
弁護士に依頼せず、自身が相手に慰謝料請求の交渉をする際、相手が不貞そのものを否定したり、夫婦関係の破綻等を主張して正当化するからといって、相手を誹謗中傷するような暴言を吐くことはやめましょう。
暴言の内容によっては、逆に、慰謝料を請求されることになりかねません。また、内容によっては、脅迫罪(刑法222条)や強要罪(刑法223条)などに該当し、被害届を出されて最悪処罰されるリスクもあります。
このような点からも、弁護士に依頼することをおすすめしますが、もし費用などの点から自分が交渉せざるを得ない場合には、暴言を吐かないよう冷静に対応することを心がけましょう。
友人などに仲介を頼むことはやめましょう
不貞相手が知人などの場合には、交渉の仲介を友人に依頼する人もいますが、おすすめできません。
その友人の仲介に不満が出て、そちらともトラブルになる危険があります。
また、その友人に仲介料などを支払えば、非弁行為(弁護士資格を持っている者しか行ってはいけないと法律上定められている行為)に該当することになり、友人が処罰されるリスクがあります。
誰かに仲介を依頼したい場合には、お金が多少かかっても弁護士に依頼すべきです。
自ら尾行したりすることはやめましょう
興信所に依頼するお金がもったいないからといって、自ら配偶者と不貞相手を尾行することもおすすめめできません。
気付かれないように尾行するには、テクニックが必要です。そのようなテクニックもなく、素人が尾行すると、当事者たちに見つかってトラブルになるリスクがあります。また、知らず知らずのうちに無断で私有地に立ち入ってしまい、通報される事態なども生じやすいです。このような観点からもおすすめできません。
まとめ
今回は、相手が不貞行為を認めない場合の慰謝料請求の可否や、証拠の集め方、注意点などについて解説しました。
相手が認めないからと言って慰謝料請求をあきらめる必要はありませんが、自分自身で頑張りすぎると、かえってトラブルが大きくなります。
興信所や弁護士といったプロを活用することを、最後に改めておすすめします。