離婚の話し合いがまとまらず、協議が難航していると、相手が弁護士を立てることがあります。相手が弁護士を立てると、「今後の離婚の話し合いで不利になるのでは?」と不安になる方も少なくないでしょう。
相手が弁護士を立てた場合、その後の離婚の進め方が変わってきますので、対応方法をしっかりと押さえておくことが大切です。
今回は、離婚問題で相手が弁護士を立てる理由とその対処法をわかりやすく解説します。
離婚問題で相手が弁護士を立てると言われた!
離婚問題で相手が弁護士を立てるのには、どのような理由があるのでしょうか。
相手が離婚に関して弁護士を立てる理由
相手が離婚について弁護士を立てる理由は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
①離婚問題について有利な条件で解決したい
離婚の際には、離婚をするかどうかだけでなく、以下のような条件を取り決める必要があります。
- 親権
- 養育費
- 婚姻費用
- 慰謝料
- 財産分与
- 面会交流
- 年金分割
たとえば、相手が「子どもの養育費をできるだけ確保したい」、「これまでの生活水準を下げたくない」、「相手の不倫やDVなどを考えると納得できる条件がほしい」などと考えている場合には、交渉を有利に進めるために弁護士に依頼した可能性があります。
②相手と直接交渉したくない
離婚理由や夫婦の関係性によっては、相手と直接話をしたくないということもあります。特に、DV、モラハラ、不貞行為などが離婚の理由である場合には、相手に対する恐怖心や嫌悪感を抱いていますので、できる限りかかわりたくないと考えているはずです。
弁護士に依頼をすれば、弁護士が代理人として交渉をすることができますので、相手と直接話したくないという理由で弁護士に依頼している可能性もあります。
相手が離婚に関して弁護士を立ててきた場合の注意点
相手が離婚に関して弁護士を立ててきた場合は、以下の点に注意が必要です。
①弁護士は中立的な立場ではない
相手が依頼した弁護士は、相手の代理人として行動し、相手の利益を最大化することが役割ですので、決して中立的な立場ではありません。
そのため、相手の弁護士から提示された離婚条件は、こちらにとって不利なものである可能性がありますので、十分に精査せずに離婚するのは危険です。
②相手との直接交渉が制限される
相手の弁護士からは、「直接相手方に連絡するのは控えて、弁護士にご連絡ください」との通知が届きます。当事者同士で連絡をしてもペナルティはありませんが、相手は直接の話し合いには応じてくれませんので、弁護士を通さずに離婚の話し合いをするのは困難になります。
③不用意な発言は不利になるおそれがある
相手や弁護士との電話、メール、LINEなどのやり取りは、すべて証拠になる可能性があると考えて行動すべきです。弁護士からの突然の連絡に動揺して、不用意な発言をしてしまうと、今後の離婚にあたって不利な証拠になる可能性がありますので注意しましょう。
④弁護士との交渉で精神的に疲弊する可能性がある
相手が弁護士を立てると、基本的にはすべての連絡を弁護士を通して行わなければなりませんので、慣れないやりとりに精神的に疲弊してしまう可能性があります。
離婚問題で相手が弁護士を立てるタイミング・理由
相手が弁護士を立てるタイミングには、主に以下の3つのタイミングが考えられます。
離婚協議のタイミング
夫婦だけの話し合いだとどうしても感情的になってしまい、離婚の話し合いがまとまらないことがあります。このような場合には、協議離婚のタイミングで弁護士に依頼する可能性があります。
相手が弁護士に依頼すると、離婚の話し合いは原則として弁護士を介して行わなければならず、相手の弁護士から提示された離婚条件がこちらにとって不利なものでないかどうかを慎重に判断する必要があります。
離婚調停のタイミング
協議離婚では離婚の合意に至らない場合は、離婚調停の申し立てが必要です。離婚調停は、基本的には話し合いの手続きですので、当事者だけでも対応できる手続きといえます。
しかし、不慣れな方だと、緊張や不安から調停で自分の言いたいことを言えない可能性があります。そこで調停を有利に進めるために離婚調停のタイミングで弁護士に依頼することがあります。
離婚訴訟のタイミング
離婚調停が不成立になった場合、離婚訴訟の提起が必要になります。
離婚訴訟は、調停とは異なり話し合いではなく、裁判所が当事者からの主張立証を踏まえて、離婚の可否や離婚条件について判断する手続きです。
非常に専門的かつ複雑な手続きになりますので、本人だけでは対応が困難ですので、協議離婚や離婚調停を自分だけで対応していた場合でも離婚訴訟のタイミングで弁護士に依頼することになります。
離婚で相手が弁護士を立てた場合の流れ・対応策
相手が弁護士を立てた場合には、以下のような対応が必要になります。
弁護士からの通知書を受け取る
相手が弁護士に依頼した場合、弁護士から「受任通知」、「協議離婚申入書」などのタイトルが記載された通知書が送られてきます。通知書には、相手方が弁護士を依頼したことおよび相手方が希望する離婚条件などが記載されているのが一般的です。
弁護士から通知書が届いたら、無視するのではなく、内容をよく確認したうえで今後の対応を検討する必要があります。焦って対応すると今後の離婚交渉で不利になる可能性もありますので、まずは落ち着いて中身を確認するようにしましょう。
相手弁護士への対応は弁護士に依頼する
相手が弁護士を立てた場合、基本的には、相手の弁護士との間で離婚の話し合いを進めていくことになります。しかし、知識や経験が豊富な弁護士が相手では、自分の希望する離婚条件を認めてもらうことは困難です。素人では、相手の弁護士から提示された離婚条件が有利なものか、不利なものか判断できず、不利な条件に気付かず離婚に応じてしまうリスクがあります。
そのため、相手が弁護士を立てた場合は、こちらも弁護士を立てて交渉するのがおすすめです。自分も弁護士を立てれば、離婚交渉は相手の弁護士と自分の弁護士との間で行われますので、不慣れな交渉による精神的ストレスも大幅に軽減されるでしょう。また、不利な条件で離婚してしまうリスクを回避することもできます。
なお、弁護士を選ぶ際は、離婚問題の経験が豊富であり、交渉力が高い弁護士を選ぶことが重要です。自身の権利や利益を守るためにもまずは弁護士に相談しましょう。