旦那が帰ってこない|失踪・行方不明の場合の手続きなど解説

法律相談

突然旦那が帰ってこなくなり、連絡も取れない状態になると、残された家族にとっては非常に不安な気持ちやストレスを抱えることになります。

旦那が帰ってこない状態が数日や数週間程度であれば、何とかやっていけるかもしれませんが、数か月や数年単位で帰ってこなくなると、生活費の支払いもなく生活に大きな支障が生じてしまいます。

このように旦那が失踪または行方不明となった場合には、どのような方法で離婚をすることができるのでしょうか。

今回は、失踪または行方不明により旦那が帰ってこないときの離婚の方法についてわかりやすく解説します。

旦那が失踪して連絡なしの場合はどうする

旦那が失踪して、連絡も取れないような場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。

(1)旦那がいそうな場所を探し、情報を集める

旦那が失踪してしまうと不安な気持ちでいっぱいになりますが、まずは、落ち着いて自分のできる範囲で旦那の居場所を探してみましょう。その際には、以下のような方法で探してみるとよいでしょう。

  • 旦那の友人や職場の同様に連絡して情報提供を求める
  • 旦那がよく行く場所や思い出の場所を探す
  • スマートフォンのGPS機能などを活用して居場所を探す

また、旦那が残した持ち物やメモを調べることで、失踪した動機や失踪先の情報を知ることができるかもしれません。

(2)警察に行方不明届を提出する

旦那が突然いなくなり、居場所もわからないときは、警察に行方不明届を提出しましょう。

行方不明になった経緯や動機などから事件性があると判断された場合には、警察による積極的な捜索活動が期待できますので、早期に居場所が発見される可能性が高くなります。

他方、命に係わる緊急性がないなど事件性がないケースでは、積極的な捜索は期待できません。しかし、行方不明届の提出により、警察のデータベースに登録されますので、全国の警察が手配し、情報提供を受けることができます。また、行方不明届の提出により、信用度が高まり、企業や店舗などにも情報提供を求めやすくなるなどのメリットがあります。

(3)探偵事務所に相談して専門的な支援を受ける

自力で旦那の居場所を見つけることができないときは、調査のプロである探偵事務所に相談することも有効な手段となります。

早い段階で探偵に相談すれば、旦那が残した痕跡から足取りをたどることができ、旦那の居場所を見つけられる可能性が高くなります。

しかし、豊富な経験と実績を有する探偵事務所への依頼は、高額な料金がかかる可能性もありますので、費用面の負担も考慮した上で検討するようにしましょう。

旦那が失踪後、離婚できるのか

旦那が失踪してしまうと、正常な夫婦生活を送ることができなくなります。そのような場合には、旦那と離婚することができるのでしょうか。

(1)協議離婚や調停離婚はできない

協議離婚や調停離婚は、相手との話し合いにより離婚を行う手続きになります。そのため、旦那が失踪している状態では、そもそも話し合いを進めることができませんので、協議離婚や調停離婚をすることはできません。

そのため、旦那が失踪している場合には、裁判離婚を求めて離婚訴訟を提起する必要があります。

なお、旦那が失踪していないことをいいことに、勝手に離婚届に旦那の名前を記入し、押印して離婚届を提出することは犯罪行為にあたり刑事罰が科されます。このようなリスクを避けるためにも離婚裁判という正式な方法で婚姻を解消しなければなりません。

(2)失踪は離婚原因になるか

裁判離婚では、裁判所が夫婦の離婚の可否を判断することになります。その際には、以下のような法定離婚事由が存在している必要があります。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

旦那が3年以上失踪して、連絡が取れず、生死が不明という場合には、法定離婚事由である「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」(民法770条1項3号)に該当します。また、失踪から3年を経過していなかったとしても、事情によっては、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当する可能性もあります。

離婚裁判では、これらの事情を主張立証していくことで、離婚が認められる可能性があります。

(3)公示送達を行い裁判へ

通常の裁判であれば、訴状を相手の住所地に送達することにより裁判がスタートします。しかし、旦那が失踪している状態では、この方法をとることができません。そこで、このようなケースでは、「公示送達」という方法を利用します。

公示送達とは、裁判所の掲示板に書面を掲示することで、相手に送達したとみなす制度です。公示送達を利用するには、原告において相手が行方不明で通常の送達ができないことを証明しなければなりません。そのため、原告は、被告の住所や勤務先を調査し尽くして不明であることを報告書として提出します。

なお、実際の離婚裁判では、第1回期日で原告の証拠書類を調べ、尋問が行われますが、被告側からの反論はありませんので短時間で結審されます。結果的に離婚が認められ、判決が確定すれば市区町村役場に離婚届を提出し、離婚をすることができます。

失踪宣告とは

旦那が失踪している場合には、離婚ではなく、失踪宣告という方法を利用することにより、婚姻関係を解消することもできます。

(1)失踪宣告と離婚

失踪宣告とは、一定期間生死不明の人に対して、裁判所が法的に死亡したと判断する制度です。失踪宣告には大きく分けて「普通失踪」と「特別失踪」の2つがあります。

普通失踪では、7年間以上生死不明の状態が続いていれば裁判所に申立てることができ、失踪宣告が認められれば、7年経過した日に死亡したものとみなされます。

特別失踪では、戦争や船舶の沈没などの危難が去ってから1年以上生死不明の状態が続いていれば裁判所に申立てることができ、失踪宣告が認められれば、危難が去った時点で死亡したものとみなされます。

いずれの失踪宣告であっても、失踪宣告の審判が確定することで、配偶者は死亡したものとみなされますので、それにより婚姻関係は終了します。失踪宣告は、裁判離婚とは異なり、遺産相続や保険金の受け取りができるといったメリットがあります。

(2)失踪宣告後、生きていた場合

裁判所による失踪宣告が確定後、しばらくして、行方不明の旦那が帰ってきたときはどうなるのでしょうか。

この場合には、失踪宣告を受けた本人から裁判所に失踪宣告の取り消しの審判の申立てをすることができます。この審判で失踪宣告の取り消しが認められれば、原則として、失踪宣告の効果は遡って否定されますので、婚姻関係は復活し、失踪宣告により得た財産や保険金の返還を行わなければなりません。

そのため、確実に婚姻関係の解消(離婚)という効果を生じさせるのであれば、失踪宣告ではなく、離婚裁判による方法がおすすめです。

まとめ

旦那が帰ってこない状態が長期間続いているときは、離婚裁判または失踪宣告という方法により、旦那との婚姻関係を解消(離婚)することができます。

離婚裁判と失踪宣告には、それぞれ異なるメリットとデメリットがありますので、どちらの方法を選択するのかについては、専門家である弁護士に相談しながら決めていくとよいでしょう。

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