DVで慰謝料請求はできる?|証拠・ポイント等を徹底解説

法律相談

夫の暴力が原因で離婚を考えているという人は少なくありません。暴力を日常的に受けていると反抗することも難しくなってしまいますので、早めに離婚の準備をしておくべきです。その際は、DVに対する慰謝料も受け取りましょう。

今回は、DVの慰謝料請求について解説します。DVの定義と慰謝料請求の時効、DVと慰謝料の相場、DVを理由に離婚をするときに気をつけるべきポイント、についてわかりやすくご説明します。

DVとは|その基準は?軽くてもいいの?

まず、DVにはどのような内容が含まれるのかを理解していきましょう。DVの慰謝料請求の時効についてもご説明します。

DVとは、配偶者や恋人が精神的・肉体的苦痛を与える暴力のこと

DVとは、ドメスティックバイオレンスの略称です。配偶者や恋人があなたに対し精神的・肉体的苦痛を与えているのなら、DVだと捉えることができます。暴力の態様によっては「DVというほどではない」と考える人もいるかもしれませんが、程度の軽重に関わらず、精神的・肉体的苦痛があればDVといえます。

DVの具体例としては以下が挙げられます。

・肉体的暴力
・精神的暴力
・経済的暴力
・性的暴力

殴る蹴る、叩く、ものを投げるなどは、肉体的暴力です。暴言を吐いたり、無視したり、行動制限をするような場合は精神的暴力に当てはまります。生活費を渡さない、仕事をさせないというのは経済的暴力です。性行為を強要する、避妊しない、嫌な性行為を押し付けてくる、というのは性的暴力に含まれます。

家庭内、または恋人間の間でDVがあることは少ない例ではありません。家庭内のことであるためにあまり公にはなりませんが、多くの人が苦しんでいます。被害者の多くは女性です。DV被害者を守るために「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」も制定されています。

暴力を受けると、「自分が悪いんだ」と思ってしまうことがありますが、これは間違いです。どのような理由があれ暴力は許されません。今、このような問題を抱えている場合は、今すぐ身の安全を確保し、婚姻中の場合は離婚の手続きを進めるべきです。

 

DVの慰謝料請求の時効について

DVを受けた場合には離婚する際に慰謝料請求をすることができます。しかし、注意しなければいけない点もあります。それは、時効です。DVに関する慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求となります。不法行為に基づく損害賠償請求は、損害及び加害者を知った時から3年と定められています(民法724条)。離婚の場合は、離婚時から3年となります。

離婚の際は相手から離れるのに必死で慰謝料を請求できなかったという事例もよくあります。DVがある場合は、相手に対する恐怖心からできなかったというケースもあるでしょう。慰謝料は離婚してからでも3年以内は請求することができますので、この点を覚えておいてください。

DVと慰謝料の相場と計算方法

DVがあった場合、慰謝料にはどのような影響があるのでしょうか。DVの慰謝料相場と慰謝料の計算基準についてご説明します。

慰謝料の相場は、50万円〜300万円

DV被害について慰謝料を請求する場合、どれくらいの金額を請求することができるのかは、事前に知っておきたいですよね。

まず、知っておいてほしいのは「慰謝料は当事者の合意で金額を決めることができる」ということです。50万円でお互いが納得すれば、その金額になります。他方、500万円で両者が納得すればそれが慰謝料額となります。特にいくらの範囲内でなければいけないという決まりはないため、当事者が合意した額になると考えてください。

そのため、相場はケースごとに異なります。ただし一般的にいわれているDV慰謝料額は、50万円〜300万円です。金額に開きがありますが、それぞれの事情を考慮すると、金額は異なってくるということです。暴力への慰謝料としては少なすぎると考える人も多いと思いますが、実際上相手が支払える金額でないと請求しても支払ってもらえません。そのため、相手の懐事情も考慮しながら請求金額を考えると良いでしょう。

慰謝料の金額を計算する方法

DVの慰謝料額を定めるのは、基本的には当事者です。しかし、金額を増額したり、減額したりする客観的な基準がないわけではありません。慰謝料金額を見極める際は、 以下の事情を考慮します。

・DVの頻度、回数、期間
・DVによる被害の程度
・子どもの有無
・婚姻期間
・相手の年収
・被害者側の落ち度など

DVの頻度や回数が多い、期間が長いほど慰謝料額は増額できます。被害の程度も骨折するなど大きな怪我を伴う場合や精神的被害でうつ病を罹患した場合など、被害が大きければ苦痛も大きいため、増額事情として考えることが可能です。

2人の間に子どもがいる場合、婚姻期間が10年以上の長期と言える場合には、これも増額事情として働きます。他方で、相手の年収が低い場合やDV前に被害者が不倫していたなどの被害者側の落ち度が認められる場合には、減額事情として作用することもあります。

DVによる離婚で気をつけるべきポイント

DVによる離婚を検討している場合、他の離婚原因と異なる注意が必要です。以下、気をつけるべきポイント3つをご説明します。

事前にDVの証拠を集める

協議離婚や調停離婚では相手がDVを否定しない限りDVの証拠は必要ありません。しかし、相手が否定することは往々にあり得ます。また相手が離婚を拒否する可能性を考え、裁判離婚に備える必要があります。相手がDVを否定した場合、裁判離婚をする場合にはDVを行なったことを証明する客観的な証拠が必要です。

離婚を切り出してからの場合、すでに相手から離れている可能性も高く証拠を集めるのが難しくなりますので、できれば離婚を切り出す前に事前にDVの証拠を集めておきましょう。証拠の具体例としては、以下を参考にしてください。

 DVの証拠になりうる例
・DVを受けたときの怪我の写真
・病院に行ったときの診断書、領収書
・DVについて記録したメモや日記
・DVの最中に録音、録画したデータ
・DVを相手が認める発言をしたときの録音データ
・警察等に相談したときの履歴(110通報したなど、)など

これらの証拠には日付があると、より有力な証拠となります。証拠を集めていることがバレると、相手が激昂する可能性があるため、気づかれないように注意して行ってください。

第三者に入ってもらう

DVを理由に離婚を切り出しても、相手が拒絶する可能性は高いと考えられます。「絶対に離婚はしない」と言って、また暴力に走ってしまう可能性も十分に考えられるため、必要な安全策をとってから離婚の話をするべきです。

離婚の話をする場合は、第三者に立ち会ってもらうのが安全策として有効です。友人や家族、弁護士などに立ち会ってもらう、あるいは自分から直接話すのではなくこれらの第三者に離婚を切り出してもらう方法もあります。命の危険を感じる場合は、自分で直接話すのは得策ではありませんので、第三者を通して話を進めていきましょう。

また離婚の話をする前に弁護士やDV相談を承る公的機関(ex. DV相談プラス、など)に相談するのもおすすめです。今後どのように進めていけば良いのか、についてアドバイスをもらえます。

逃げ場所を確保する

離婚の話をする前にあらかじめ住める場所を確保しておきましょう。離婚を切り出す前に別居を始めるということです。逃げる場所が確保されていれば、離婚の話で暴力を振るわれそうになった時もすぐに逃げることができます。子どもがいる場合には、被害が子供にも及ぶ可能性があるため、早期に別居すること、一緒に住める場所を見つけることが重要です。

実家や家族、友人の家などが安心できますが、これらの場所が利用できない環境の場合は、先にお伝えしたDV相談プラスなどの相談機関で居場所を探してもらいましょう。

また別居した場合には生活費を相手が支払ってくれない可能性が高いです。後で婚姻費用として請求するとしても、一時的に自分で支払えるように生活資金を準備しておくと良いでしょう。

保護命令を申し立てる

DVがある場合、相手はあなたを探し出し連れ戻そうとする可能性が高いです。そのため、DV防止法を活用して、身の安全を守るようにしてください。DV防止法では、以下のような保護命令を出すことができます。

・接近禁止命令
・退去命令
・子への接近禁止命令
・親族への接近禁止命令
・電話等禁止命令

接近禁止命令とは、6ヶ月間申立人(DV被害者)につきまとう、家や勤務先にうろつくことを禁止することを指します。退去命令は、同居している場合に、2ヶ月間今いる住居から出ていくことを命じることができます。別居の引越し準備などがこの間に可能です。

子や親族に危害を加えることを防止するため、6ヶ月間子どもの近くや住居、学校、親族の実家、勤務先をうろつくことを禁止することもできます。また6ヶ月間、相手がDV被害者に対しメールや電話をできないように命令を出すことも可能です。

これらの命令に反した場合には、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(DV法29条)」が科せられます。ただし、これらの保護命令を出してもらうには、事前に配偶者暴力相談支援センターや警察署に相談に行っていることが必要です。その上で、ご自身での申立て手続きが必要となります。申立て前に事前相談をしていない場合には、公証人役場にて、暴力を受けたことに対する宣誓供述書を作成する必要があります。

DV被害による離婚は、弁護士にご相談を

DVを受けている場合には、できるだけ早く離婚準備を進めていくべきです。他方で、安全に進めるためにも様々な配慮が必要です。通常の離婚よりも難しくなる可能性がありますので、専門家である弁護士に事前に相談いただくのが正解です。お早めにご相談ください。

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