夫婦が離婚をする際の原因として非常に多く見られるのが「性格の不一致」です。
もし配偶者と相性が合わないと感じている方がいれば、性格の不一致を理由とする離婚を検討すべき段階にあるかもしれません。
しかし法律的に見て、性格の不一致を理由として離婚をすることができるのかということについては、あまり正確な理解が広まっていないように思われます。
また、特に夫婦間に子どもがいる場合には、自分から離婚を言い出したら親権争いで不利になってしまうのではないか、と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、性格の不一致を理由とした離婚や、その際の親権争いなどについて、専門的な観点から詳しく解説します。
性格の不一致とは?
「性格の不一致」とは、法律の中で用いられている用語ではなく、一般的に「性格が合わない」「相性が悪い」「価値観がずれている」などの状態を広くカバーする言葉として用いられています。
性格の不一致の具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 金銭感覚の違い
- 育児方針の違い
- 生活習慣の違い
- 趣味や好みの違い
- 夫婦関係についての価値観の違い
- 性生活に関する意識の違い
また、特に明確な離婚理由があるわけではないけれど、単純に一緒に生活をするのが嫌になったという場合などにも、「性格の不一致」という言葉が使われることがあります。
このように、性格の不一致とは、夫婦間のすれ違いを非常に幅広くカバーする言葉であるといえるでしょう。
性格の不一致を理由に離婚はできるの?
性格の不一致を理由として離婚ができるのかどうかについては、どのような方法による離婚を目指すかによって考え方が異なります。
離婚の方法には、大きく分けて①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3つがあります。
それぞれのパターンごとに、性格の不一致を理由とする離婚の可否について見ていきましょう。
協議離婚の場合
協議離婚とは、夫婦間での話し合いによって離婚をする方法です(民法763条)。
協議離婚は、夫婦双方が同意のうえで離婚届を提出さえすれば成立します。
したがって、協議離婚をするために理由は必要なく、性格の不一致を理由とする離婚も当然認められます。
なお、協議離婚の場合には、裁判所が夫婦間の話し合いを仲介したりすることはないので、夫婦が自分たちだけで離婚の条件を決める必要があります。
たとえば財産分与・養育費・婚姻費用・年金分割・親権・面会交流・慰謝料など、さまざまな条件を離婚時に決定しておかなければなりません。
このように、協議離婚の際には決めなければならないことが多いため、弁護士に相談してアドバイスを受けたり、代理で配偶者との交渉・話し合いを行ってもらったりすることも有効です。
調停離婚の場合
調停離婚とは、離婚調停を通じて夫婦間で離婚の条件に合意し、離婚を成立させる方法です。
離婚について当事者間で話し合いがまとまらない場合などには、夫婦のいずれか一方から、裁判所に対して離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))を申し立てることができます。
(参考:「夫婦関係調整調停(離婚)」(裁判所HP))
離婚調停では、夫婦がそれぞれ調停委員に対して事情や主張などを伝え、双方の求める離婚の条件などのすり合わせが行われます。
そして、最終的に裁判官が提示する調停案に夫婦双方が同意すれば、調停は成立となり、離婚が成立します。
調停離婚についても、夫婦双方が調停案に同意さえすれば離婚が成立します。
調停案の内容も、夫婦双方が同意する限りは基本的に自由に決められますし、また離婚の理由が問われることもありません。
したがって、調停離婚の場合にも、性格の不一致を理由とする離婚は認められます。
なお、離婚調停では、調停委員が各当事者から聞き取った事情などを参考にして、裁判官が調停案を作成することになります。
そのため、調停委員に対してきちんと効果的に自分の主張や、自分にとって有利な事実を伝えないと、調停案の内容が満足のいくものにならない可能性が高くなってしまいます。
よって、離婚調停を行うに当たっては、離婚事件を専門的に取り扱っている弁護士にアドバイスを受けながら手続きを進めることが賢明でしょう。
裁判離婚の場合
裁判離婚とは、訴訟(裁判)で離婚を争い、裁判所の判決内容に従って離婚をする方法です(民法770条1項)。
裁判離婚では、そもそも離婚をするかどうかについての意見が夫婦間で食い違っているため、裁判所はどちらの主張を受け入れるかの選択を迫られます。
その際の基準となるのが、「離婚事由が存在するかどうか」です。
離婚事由とは、民法770条1項各号に定められる事由を指し、離婚事由のいずれかが認められる場合には、原則として裁判所により離婚が認められることになります。
性格の不一致を理由とする離婚の場合、離婚事由のうち、主に「婚姻を継続し難い重大な事由」(同条5号)の存在を主張する必要があります。
「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在する状態といえるためには、単に相手との相性が悪い、相手のことが嫌いなどという程度では足りず、夫婦関係が破綻していると評価できるほどの状態に至っていることが必要です。
たとえば数年間にわたって別居をしている、相手からDVやひどいモラハラを受けているなどの状態であれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在すると考えられます。
なお、離婚裁判においては、離婚を主張する側は、離婚事由の存在を証拠によって立証する必要があります。
たとえば、夫婦関係の破綻を示すやり取りが記録されたメール・録音録画・日記など、別居期間を示す住民票の記載などが、離婚事由を立証するための有用な証拠となるでしょう。
性格の不一致で離婚した場合、親権はどうなる?
子供がいる夫婦にとっては、離婚時に親権をどちらが得られるのかは重大な関心事でしょう。
以下では、性格の不一致が原因で離婚をした場合に、親権者がどのように決まるのかについて解説します。
協議離婚・調停離婚の場合は、夫婦の合意により親権者を定める
協議離婚・調停離婚の場合、離婚の条件は当事者間の協議により決定されます(民法819条1項)。
そのため、親権者についても、夫婦間で合意するところに従うことになります。
裁判離婚の場合は、裁判所が総合的に判断する
一方、裁判離婚の場合は、裁判所が具体的な事情を総合的に考慮して、親権者を夫婦のどちらかに定めます(民法819条2項)。
具体的には、
- 子どもの年齢
- 子育てへの関与度合い
- 生活環境、経済的状況
- 子どもの意思
などが考慮され、どちらの親の下で生育するのが子どもにとって良いかを裁判所が判断します。
離婚を言い出した側が親権争いで不利というわけではない
裁判離婚時の親権者の決定に際しては、あくまでも子どもの利益の観点から、どちらの親の下で育つのが良いかが判断されるものです。
そのため、離婚をどちらから言い出したかについては、親権争いにおける考慮要素にはなりません。
まとめ
性格の不一致による離婚は、協議離婚・調停離婚のケースでは夫婦間の合意があれば可能です。
一方、裁判離婚の場合、より強力な離婚事由の存在を立証する必要があります。
離婚の手続きごとに注意すべき点は異なるので、離婚にお悩みの方は、一度弁護士に相談してみてください。